「ハマグリのお寿司に中国の香酢を使い、非常に面白い」
ワンに煮物椀について尋ねると、「初めて教わった日本料理が煮物だったので楽勝だった」と手応えを感じていたようだった。審査委員長の村田氏は、ワンの煮物椀を「人参が細かく細工されていましたね。全体的にきれいに盛り付けられています」と評した。
煮物椀作りが終わると、翌日の自由課題「前菜の盛り合わせ(5品以上)」に向けた仕込みに移る。仕込み時間は100分。各選手が日本で購入した食材を使って前菜を作る。なお2日目の調理時間は120分だ。
2日目。選手たちは予行練習をしてきたはずだが、全選手が終了間際まで作業に追われていた。ワンは「普段は、数人のシェフたちと協力して一つの料理を作るので、たった一人で作業するのは大変だった」と振り返る。
村田氏は、ワンの前菜をこう評した。
「非常にきれいに盛られていておいしかったと思います。ハマグリのお寿司に中国の香酢(鎮江香酢)を使い、日本にはない作り方をしていて非常に面白いですね。日本料理でありながら自国のテイストを入れてくるというのが、非常に良いと思いました」
「給料が高いホテルの料理人になって、生活を豊かにしたかった」
ワンはこのほか、①鴨むね肉の葱香味ロースト、②春菊と菊花の和え物、③大根の胡麻みそ田楽・海老飾り、④くわいと梅花にんじんの煮物、⑤れんこんと小豆の羊羹をつくった。見た目と味の両面から春を感じさせる作品だった。
決勝大会の最終順位は、1位がワン・ウェイ・ピン選手(中国)、2位がヤエル・ピート選手(アメリカ)、3位がロウ・マン・ホン選手(シンガポール)となった。
和食ワールドチャレンジは農林水産省が主催しており、世界各地での日本産食材と日本料理の普及・拡大を後押しするのが狙いだ。村田氏は、最後に大会をこう締めくくった。
「どの選手の料理もおいしく、僅差でレベルが高い大会となりました。日本料理が勢いよく世界に広がっているのがすごいと思います。和食ワールドチャレンジに、もっとたくさんの国の人たちに大会に参加していただきたいですね」
なぜワンは中国人であるのに日本料理を作り始めたのだろうか。
「給料が高いホテルの料理人になって、生活を豊かにしたかった」
ワンは料理の道に進んだ理由をそう話す。