世界各国の外国人シェフが日本料理の調理技術を競い合うコンテスト「和食ワールドチャレンジ」。2020年2月20日と21日に第7回の決勝大会が東京・汐留で開かれ、中国人シェフのワン・ウェイ・ピン選手が世界王者となった。彼が23年間、日本料理に取り組み続ける理由とは——。

世界17の国と地域から83人が応募

ワン・ウェイ・ピンは「日本料理に対する理解と料理の腕が、どこまで通用するのか知りたい」と思い、2018年に初めて和食ワールドチャレンジに出場した。だが、結果は3位。そして今回は「必ず世界王者になる」という目標を掲げていた。

和食ワールドチャレンジは2013年に始まり、7回目の今回は世界17の国と地域から83人の応募があった。書類審査を通過した23人が、香港(中国)、シンガポール、パリ(フランス)、サン・セバスチャン(スペイン)、ニューヨーク(アメリカ)の5都市の予選大会に出場。それぞれで最も評価の高かった5人が東京に集まった。

各予選大会の優勝選手(名前、国籍、年齢、シェフ歴)
香港:ワン・ウェイ・ピン 中国 42歳 23年
シンガポール:ロウ・マン・ホン シンガポール 37歳 13年
パリ:ヴォイチェ・ポポウ ポーランド 33歳 9年
サン・セバスチャン:ミレイア・ファルノス・エスプニー スペイン 23歳 学生
ニューヨーク:ヤエル・ピート アメリカ 29歳 8年
ワン選手の調理の様子
撮影=Hiroyuki Ishii
ワン選手の調理の様子

決勝大会のテーマは「うま味と食感」。選手たちは2日間で計5時間10分の競技時間に、指定課題の「煮物椀」と自由課題の「前菜の盛り合わせ」を調理した。

会場は静か、聞こえるのは調理の音ばかり

大会審査員を担当したのは、第一線で活躍する3人の料理人。村田吉弘氏(菊乃井 3代目主人)、仲田雅博氏(京都調理師専門学校 校長)、松尾英明氏(柏屋 総料理長)。審査員は、うま味、食感、作業、外観、調理姿勢などの全64項目をチェックした。

決勝大会1日目の指定課題は、共通食材(車海老、すり身、蓮根、人参、小芋)を使用した煮物椀作り。調理時間は90分だった。

会場は静かだった。厨房には選手を含め30人ほどがいたが、聞こえるのは調理の音ばかり。審査員はお互いに小声で相談していたが、その声がかすかに聞こえるほどだった。

このときワンは淡々と作業していたのだが、味見をした時だけ、わずかに眉間にしわを寄せて執拗しつように味を確認していた。その後、試食が行われたが、ワンの煮物椀を含め、5選手の料理はどれもおいしかった。

ワン選手の煮物椀
撮影=Hiroyuki Ishii
ワン選手の煮物椀