そして時は現代、岡村隆史のオールナイトニッポンに戻る…

こうして勃発した「大坂の陣(1614年、1615年)」で豊臣家は完全に滅ぼされた。もっとも現在では、鐘銘した文英清韓は豊臣恩顧の僧であり、真意としてはやはり家康を呪詛する内容で、なまじ家康側の完全な言いがかりともいえないという見方もある。が、鐘銘した側にいささかの落ち度があろうとなかろうと、そんなことは家康にとって何の問題でもなかったのであった。

こうした難癖、言いがかりは近世世界に特有のものではない。発言者の言を切り取り、恣意的で扇情的な見出しを作って格好の攻撃目標とする。そんな姿勢は、時代が400年を経た現在でも変わらないようだ。

4月23日のニッポン放送の『岡村隆史のオールナイトニッポン』での、岡村氏の発言(以下岡村発言)が物議をかもした。番組終盤、リスナーからのメールに応える形で、「コロナ明けたら、ナカナカの可愛い人が短期間ですけれども、美人さんがお嬢やります。(略)コロナ明けた時に、われわれ風俗野郎Aチームみたいなもんは、この3カ月、3カ月を目安に頑張りましょう」という内容であった。私はこの番組をカーラジオでBGM代わりにしていたので、当該部分は聞き逃していた。

岡村発言を直接聞かずに批判する、藤田孝典氏の言いがかり

岡村隆史 お笑いコンビ「ナインティナイン」メンバー=2019年08月29日、「Dクリニック」新CM発表会。
岡村隆史 お笑いコンビ「ナインティナイン」メンバー=2019年08月29日、「Dクリニック」新CM発表会。東京都港区(写真=時事通信フォト)

岡村発言がにわかに問題化するのは、番組終了後数日たって、FLASH電子版がこの発言を文章化して報道したことだ。このFLASH電子版の報道を引用する形で、すぐさま批判記事を書いたのが社会福祉士でNPO法人ほっとプラス理事である藤田孝典氏であった。藤田氏の記事中では、ラジオの生放送や後日ネットで聴取できるradikoでの一次音声からの出典は一切無く、あくまでFLASHからの二次引用の形に終始していた。ところが藤田氏は5月になってこの記事を訂正し、「知人から教えてもらってradikoの音源を聴いた(要旨)」としているが、記事のタイトルは“岡村隆史「お金を稼がないと苦しい女性が風俗にくることは楽しみ」異常な発言で撤回すべき”であった。

岡村氏は「楽しみ」などとは一言も言っていない。通常、記事のタイトルは編集者がつけるものである。記事中の内容には登場しない単語が記事のタイトルに冠されるのは、編集作業の慣行からいって常識の範囲内ともいえるが、藤田氏の記事は藤田氏自身がタイトルをつけているので、極めて恣意的で扇情的な見出しと言える。通常、見出しに記される括弧「」は引用を示すので、それ以外のところが趣旨の要約であっても、括弧「」内は発言事実に正確でなければならないのである。仮に私がタイトルをつけるとすれば「いわゆる『岡村発言』は女性軽視で撤回すべきだ」くらいであろう。