なぜ世襲議員は国民生活に無理解なのか

しかし、新型コロナウイルス問題と緊急事態宣言に伴う経済不況という「危機」において、世襲議員達の評判は芳しいものとは言えない。

安倍首相のリーダーシップは、官邸官僚による思い付き(マスク配布・動画投稿等)、意思決定の基準・プロセスの不明瞭さ、専門家委員会に対する意思決定の事実上の丸投げによって、日本国民から疑義が持たれる事態になってしまっている。

麻生副総理は財務大臣の立場もあって国民生活の危機に対する感度が鈍いように見えるし、加藤大臣は感染症対策に対する指導力を十分に発揮できていない。西村大臣は特措法改正の担当大臣であり、新型コロナウイルス感染症対策本部の副本部長となっているが、最初の緊急事態宣言の期限である5月6日までに業界ごとの感染拡大防止ガイドラインすら完成していなかった。

小泉大臣は、ゴミ袋に感謝のメッセージや絵を描いてゴミ収集に当たる人を応援してほしいと言いながら、彼が所管する環境省は新たな増税であるカーボンプライシング(≒炭素税)の調査研究発注を国民が経済不況で苦しむ中で行っている。国民生活への無理解も甚だしい。

非世襲政治家として最も力を持つ菅長官

総裁候補の岸田文雄自民党政務調査会長も第1次補正予算の閣議決定後の見直しによって、友党である公明党に面子を潰される形となり、いかにも頼りない印象を与えてしまった。

平時には世襲議員らはスキャンダルも表面化せず、官僚機構の上に「殿」として乗っかることで、大手メディアが総理候補だと持ち上げてくれる。ただし、その政権の緩みは危機における指揮系統や責任関係すら不明瞭なリーダーシップの欠落を生み出すことに繋がっている。周囲の役人のお膳立てが機能しない、つまり官僚機構が対応できない「危機」が発生すると、途端に政権の動きがチグハグしたものになったことも然もありなんと言えるだろう。

現在、政権の中で、非世襲政治家として最も大きな力を持つ人物は、菅義偉官房長官にほかならない。