「逆境に強い」という共通点

1位は圧倒的な支持を得て、吉村洋文・大阪府知事。2位は小池百合子東京都知事、3位は安倍晋三首相、4位は北海道の鈴木直道知事、という順位であった。

緊急事態宣言の影響もあり、都道府県知事がメディアに露出することが多いため、上位に彼らが並ぶことは驚くには値しない。しかし、同じ都道府県知事を比較したとしても、この難局に際し、積極的にリーダーシップを振るった人物が国民から評価されていることは間違いない。毎日新聞の世論調査は調査総数にやや問題があるが、仮に調査対象者数を増やしたとしても上位にそれほど大きな変化はないものと思う。

危機において名を上げる人々の特徴は「逆境に強い」ということが言えるかもしれない。吉村知事も小池知事も全国で圧倒的な力を持つ自民党に対し、地方勢力ではあるが、一定の勢力を戦って築いてきた政治勢力のリーダー格的存在だ。鈴木知事も財政破綻した夕張市の市政運営という極めて厳しい自治体経営の経験を持つ人物だ。

安倍政権は世襲政治家のカタマリ

これらの人物の背景の共通点は、世襲議員ではないこと、だろう。つまり、生まれたときから政治家業を引き継ぐことが決まっていた人々ではなく、自らの意思で現在のポジションを勝ち取ってきた人ということができる。日本の政界の世襲比率は増加しており、中央官僚の事実上の天下りでもなく、非世襲政治家として都道府県知事という要職に就くことは並大抵のことではない。

一方、安倍政権は世襲政治家のカタマリのような政権である。主要閣僚ポストの多くは世襲議員(閨閥も含む)によって占められている。有名どころでは、安倍首相自身はもちろん、麻生太郎副総理、河野太郎外務大臣、小泉進次郎環境大臣、らが挙げられる。コロナ対策では、加藤勝信厚生労働大臣も西村康稔経済再生担当大臣(新型コロナ対策担当大臣)も官僚及び秘書出身で選挙には苦労したものの、有力政治家一族と婚姻関係を結んでいる。

世襲政治家や婿入り官僚は政治的な筋の良さもあり、彼らはスキャンダルが続発した第4次安倍内閣発足当初も安定した立ち上がりを見せた。若干はその行政運営の能力が問われる事例があったものの、政権を揺るがすほどの問題を発生させる人物はいなかった。世襲や閨閥の同質性は政治調整の安定性をもたらし、平時における安倍政権の長期政権化を支える土台となったものと思う。