同期の3分の2以上が退職するなか……
神永は現在、インターネット広告事業本部営業局の局長(局は50以上ある)と、エグゼクティブディレクターを兼務している。局長は数名の部下を率いる管理職であり、エグゼクティブディレクターは個別のクライアントを自ら担当する“現場の役職”の最高位だ。エグゼクティブディレクターは営業局全体の2%しか存在しないというから、この肩書を持つことはトップ営業マンの証でもある。
CAの組織には柔軟性があって、管理職になったら現場に出ないわけではなく、「肩書に関係なくその仕事をこなす能力がある人が、その仕事をやる」のが原則。現場で仕事をするからといって、給与が下がることもない。
ちなみに、神永の同期34人中、CAに残っているのは10人で、全社員に占める40歳以上の割合は約16%。社長の藤田の口癖は「偉いやつほど働く」であり、役員が最もハードに働くカルチャーが定着している。
辞めていった同期の中には、自分で起業したり、他業界の有名企業へ転職した人間も多くいる。40歳を過ぎて現場の担当者として仕事をするのは、しんどくはないだろうか。
「インターネット広告の世界は、仕事に必要な知識も情報もどんどん変化していきます。私が入社した当時は、完パケ(完全パッケージの略)を入稿してそれが配信されるだけでしたが、いまは管理画面でユーザーの反応を見ながら、配信された広告のパフォーマンスが最大化するように運用するのが当たり前の時代になっています」
部下だろうと「教えて」とお願いしに行く
だから、勉強をし続けなければならない?
「社内外のマーケットで先頭集団に居続けようと思ったら、サボれませんね。知識と情報の更新を少しでも怠ると、お客様にも後輩社員にも置いていかれます。でも、僕はそれを面白いと思うタイプだし、若手には絶対に負けない領域を持っているので、特に危機感はないんです」
たとえば、若くて優秀な後輩社員と一緒にクライアントとの打ち合わせに行った際、後輩社員が自分の知らない領域に関する知識をクライアントに披露したとする。
筆者がイメージする“日本的大企業”の上司ならば、オレより目立ちやがってと苦々しく思うか、あるいは、この若手はよく勉強しているから次回も同行させようと思うかもしれない。だが、神永はそのいずれでもない。
「自分の知らない領域に詳しい社員がいたら、部下だろうと年下だろうと、『さっきの話よく知らないから教えて』ってお願いしに行きますね。知らないことに関しては謙虚でいたいし、そこで偉そうにしてしまうと浦島太郎になっちゃうんで……」
神永は「謙虚」という言葉を使ったが、神永の社内ヒアリング、謙虚などという生易しいものではないようだ。新入社員時代から神永の薫陶を受けてきた井本駿一(29歳)は、こう証言する。