金正恩の健康不安説で、朝鮮半島情勢の不安定感は増加

新型コロナウイルスが韓国経済に与える影響を考える時、元々、韓国が抱えていた問題がコロナショックで顕在化したと考えると分かりやすい。世界規模で考えても、コロナショックは医療制度や格差問題など、これまでの問題が深刻化するきっかけになっている。

4月15日の総選挙では左派の政権与党である「共に民主党」が圧勝した。政治基盤が安定することは、政治、経済、社会の安定にとって重要だ。ただ、文在寅(ムン・ジェイン)大統領の政策には懸念点が多い。コロナショック以前から文政権の政策運営スタンスを警戒する市場参加者は多かった。

文氏は南北統一と反日を一貫して重視している。冷静に考えると、北朝鮮にとって核兵器の保有は体制維持のためのお守りといえる。それを金一族が手放すことは想定できないと指摘する安全保障の専門家は多い。

総選挙後、北朝鮮の金正恩委員長の健康不安説が流れるなど、朝鮮半島情勢の不安定感は増している。世界全体がウイルスとの戦いに必死の中、韓国の安全保障体制への懸念は高まるばかりだ。

韓国のカントリーリスク上昇を警戒

また、本来であれば朝鮮半島情勢の安定のために韓国はわが国との連携を重視すべきだ。しかし、総選挙で勝利した文政権が反日姿勢を修正するとは考えづらい。経済界は日韓の通貨スワップ協定の再開などを求めているが、事は容易に進まないだろう。

むしろ、知日派の官僚などが政権から遠ざけられ、わが国との関係にさらなる隙間風が吹く展開が懸念される。現状、文政権がコロナウイルスを抑え込んでいることもあり、保守派と経済界が連携して左派政権への批判を展開することも難しいだろう。

同時に、世界経済の先行き懸念は日に日に増している。4月20日にはWTI原油先物価格がマイナスに落ち込むなど、これまでに経験したことがないほどの勢いで世界の需要が大幅に落ち込んでいる。

輸出によって外需を取り込んできた韓国への逆風は強まっているとみるべきだ。先行き懸念から、ソウルの為替相場ではウォンがドルに対して売られている。韓国のカントリーリスク上昇を警戒し、多くの資金が海外に流出しているとみられる。