論文のネタを持っている社会人は歓迎される

そうすることで、応募書類や面接に説得力をもたせることができ、合格しやすくなるのです。面接でこれまで仕事で経験してきたことを活かし、大学院で研究したい。それを今後の仕事に活かしたり、後進のために役立つ論文を書いて社会貢献したいと言えれば好印象でしょう」(赤田氏)

実際に、こんな例もあるという。以前、ある商店街の会長が早稲田か慶應の学歴がほしいと中央ゼミナールを訪れた。国際的なリーダーを日本から生み出す研究をしたいということだったが、赤田氏は「あなたの仕事や経歴と全くマッチしていなくて説得力がないから、商店街の活性化や地域経済活性化などを研究テーマにしたほうがいい。志望先も早稲田の政治学研究科公共経営なら可能性が高い」とアドバイス。その方向で研究計画書作成と口頭試問の指導をしたら一発で合格したそうだ。

また、いかに教授にメリットを感じさせるかも重要だ。社会人の場合は面接で、「あなたをうちの研究科に入れることに、どのようなメリットがありますか?」と聞かれることもあるそうだ。

「教授は論文のネタを求めています。いい実務経験のある会社員を入学させると、企業の生の情報を得られ、論文のネタになりますよね。教授の研究に役立つ人は入りやすいんです。よく、会社を辞めて時間をつくって受験しようとする人がいますが、合格するまで会社は辞めないほうがいいんです」(赤田氏)

例えばこんなケースも。35歳の男性の県庁の職員と地方の国立大学の法学部4年生の女性が東京大学の公共政策大学院を受験した。男性のほうはTOEFL69点(120点満点)でも合格したが、女性は90点台だったにもかかわらず不合格になった。教授が県庁の仕事を経験してきた業務知識のある中年男性のほうがメリットが大きいと判断したためではないかと赤田氏は推測する。やはり合格するためには自分の仕事の棚卸しをして、専門分野と志望の研究科をリンクさせることが重要なのだ。

「教授は受験者の学力だけでなく、人柄や思いなどから総合的に判断するので、多少TOEICやTOEFLのスコアが低くても、真面目で素直で知的探究心が強く、仕事で成果・実績を出しているビジネスパーソンや公務員なら有利でしょう」教授が気に入る人物像としては、まさに弊誌の読者はぴったり当てはまるといえるだろう。

宍戸ふじ江
宍戸ふじ江(ししど・ふじえ)
中央ゼミナール 教務部部長
 

赤田 達也(あかだ・たつや)
中央ゼミナール 大学院受験予備校講師
(撮影=和田佳久)
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