2.「枠=フレーム」で囲われていること

理由は、「紙1枚」と同じで、枠もまた「制約」として機能します。結果、なんとかして枠の中に収めようとする過程で、先ほどあげたような「考え抜くこと」ができるわけです。

また、枠の「心理的効果」についても言及しておきましょう。人間には「空白を嫌う」、あるいは「空っぽの状態になると何かしら埋めたくなる」性質があります。

そのため、あらかじめ資料上にブランクの枠をいくつか作っておくだけで、「なんとかして埋めたいな、何を書いたらいいのだろう?」という問いが、条件反射的に立ちあがってくるのです。

そういう意味では、「枠=フレーム」の存在は、実は「紙1枚」以上に、トヨタの資料作成の本質的機能を担っていると言えるかもしれません。

頭の中だけで、あれこれ考えるのか。それとも枠を見ながら、「ここに何を入れたらいいのだろう?」と考えるのか。研修登壇の際、「どちらが考えをまとめやすいですか?」とアンケートをとったりするのですが、毎回ほぼ全員が後者の方が取り組みやすいと手を上げてくれます。

3.「テーマ」が各枠の上部に記載されていること

「テーマ」を書くことの意味はやはり、「制約」として機能するから。各枠の上にテーマを記載しておけば、当然ながらテーマと関係のない話を枠の中に書くことはできません。そのため、内容の取捨選択をする必要がでてきますし、そのプロセスを通じて、ここでも「考え抜くこと」が可能になってくるわけです。

正しいデジタル化の姿とは

「考え抜く力」を身に付けていないビジネスパーソンが、「デジタル完結」の働き方を実践したらいったいどうなってしまうのか。数年前から職場でビジネスチャットを使っている管理職の受講者さんから、象徴的な話をしてもらったことがあります。

「ビジネスチャットのせいで、コミュニケーションの質が下がりました。

部下はたいした考えもなく、すぐにチャットで話しかけて報告・連絡・相談をしてきます。数年前から、社外で働くことが広くOKになってしまったので、どこにいてもチャットで捕まえられてしまい逃げ場がありません。

せめてもう少し、自分なりに考えてから話しかけてほしいです。何が言いたいのかさっぱりわからない、というより部下本人もわかっていないということが多く、あれこれ確認していたらあっという間に時間が経ってしまいます。業務効率化になんてまったくなってないですよ」

ビジネスチャットを「考え抜いて仕事をする習慣」をもたない社員が使うから、「チャットをしていたら1日が終わってしまった」などという働き方になってしまうのです。自分では深く考える習慣がないため、スマホで検索でもするような感覚で、すぐに「外に答え」を求め、周りに相談してしまうのです。