新型コロナウイルスに感染した著名人が相次いで謝罪のコメントを発表している。医師の木村知氏は「感染者が謝罪することを当然のことと見なす風潮は、感染症の拡大抑止には逆効果となり、実は非常に危険である」という――。
第44回エランドール賞の授賞式にゲストとして登壇した脚本家の宮藤官九郎さん
写真=時事通信フォト
第44回エランドール賞の授賞式にゲストとして登壇した脚本家の宮藤官九郎さん=2020年2月6日、東京都新宿区の京王プラザ

感染者が当然のように謝る風潮

「チケットを買って下さった皆さまにも、役者、スタッフにも、家族にも、悲しい思いをさせてしまい、本当に申し訳ございません」

3月31日、俳優で脚本家の宮藤官九郎さんが、新型コロナウイルスに感染していたことを公表し謝罪した。

その前日には、ヴィッセル神戸のJリーガー酒井高徳選手も自身の感染を公表、「今回はサポーターの皆さんや一般の方々、全選手、スタッフ、その家族やご友人に不安とご迷惑をおかけしてしまうことになり、本当に申し訳ございません。(中略)多くの方々にご不安やご迷惑をかけてしまっていること、全ての皆様に心からおわび申し上げます。大変申し訳ありません」とコメントの中で繰り返し謝罪した。

さらに直近では、報道ステーション(テレビ朝日)のメインキャスターを務める富川悠太アナウンサー、そして俳優の石田純一さんが相次いで自らの感染を公表、この2人も「ご迷惑をおかけした関係者の皆様」に対して謝罪するコメントを出している。

新型コロナウイルスの感染が急拡大していくなかで、今後も著名人の感染が次々と明らかになっていくことが予想されるが、このように感染した人が謝罪するという行為、感染者が謝罪することを当然のことと見なす風潮は、感染症の拡大抑止には逆効果となり、実は非常に危険である。本稿では、なぜ感染した人が謝ってはいけないか、謝るのが当然とする社会がなぜ危険なのかについて、医師の視点から論じてみたい。