二律背反の意見は、どちらが正しいの?
現在のように大勢の人が大きな不安にとらわれた状況になると、専門家を名乗る人が次々登場し、さまざまな違う説を滔々と語り、ネットには正反対の情報が流され、わたしたちの感情はすっかり翻弄されてしまいます。
「直感」や「心の声」にしたがって行動することの大切さを語る人がいます。
その一方で、「よく考えよう」とも言います。
……いったいどちらが正しいの?
先回りして答えを明かすと、「どちらも正しい」のです。
「ポスト・イット」は失敗作だった!
一例を挙げましょう。本を読むときのしおり代わりに、また、職場の仲間に簡単なメッセージを残すツールとして、みなさんも「ポスト・イット」を使ったことがあると思います。
類似製品は数多ありますが、元祖ポスト・イットを開発したのはアメリカのスリーエム社です。同社はもともと強力な接着剤を研究、開発し、業績を伸ばしてきたメーカーでした。ところが、たまたま新製品の試作過程で、さまざまなものにくっつくけれど、すぐにはがれてしまう粘着力の弱い試作品ができあがったのだといいます。
接着剤としては失敗作。しかし、試作にたずさわった研究者は「弱い接着力が、なにかの役に立つかもしれない……」という心の声に耳を傾けました。
ただし、具体的な用途は思い浮かびません。そこで、社内の同僚たちに見本を配り、使いみちを探りました。すぐにボツにしてしまわず、熟考する時間を取ったわけです。