オランダでは救命対象基準を70歳に引き下げ

さらにオランダでは、一部のかかりつけ医から、高齢者はコロナ感染時、治療を受けられないと通告され始めていると朝日新聞(4月18日付)が報じている。中部アルメールに住むコー・フランセン(82)は、かかりつけ医から電話でそう告げられた。

「足が少し不自由だが、呼吸器などに慢性疾患はない。フランセンさんは朝日新聞の取材に対し、『個人の健康状態は様々で、治療を受けられるかは年齢だけで決めるのではなく、個人の希望が尊重されるべきだ』と話した」

だが、アムステルダムの医療専門機関「緩和ケア専門知識センター」は3月下旬に、かかりつけ医らに、「余命が1年未満だったり、慢性的に体が弱かったりする患者を集中治療室に運ばないとする基準を再確認し、内容を患者にも伝えるよう」要求した。

さらに「集中治療室医組合が3月に感染拡大時の医療崩壊を避けるため、救命対象基準を『80歳』とする指針を作り、後に『70歳』に引き下げていたことも判明した」(同)

要は、70歳以上は助けないということである。

オランダは、安楽死が認められている国である。コロナに感染した場合、年齢を考えると、集中治療室に入れたとしても生き残れるとは考えられないから、安楽死を選びたいという高齢者もいる。

自分の命の選別は自分がするというのだ。

だが私は、「年齢による医療差別はあってはならず、治療を行うかは、健康状態や今後の人生の質を見て決めるべきだ」と主張する、高齢者の意見を代弁する政党「50プラス」のヘンク・クロル党首の考えに同調する。それは、私が高齢者というだけではないはずだ。

「『命の選択』の責任を医師に負わせてはなりません」

週刊現代(4/25号)も「命の選別」について触れている。

「イタリアのロンバルディア州では、ICUでの治療を必要とする患者数が2月末からの3週間で1135人に達した。だが、地域のICUは800床しかない。マスクも、人工呼吸器も消毒液も何もかも足りないのだ。

そこに検査や治療を求める人々が次々と押し寄せる。『医療崩壊』状態に追い込まれた病院では、致死率の高い高齢者を見捨て、回復する可能性が高い若者の治療を優先した」(現代)

社会学者の大澤真幸は、「しかし人は、この苦渋の選択を繰り返すうちにだんだんと慣れていき、痛みが消えていきます。これが何を意味するのか。『一番弱い人を助けよう』という、人間が大切にしてきた倫理の土台が崩壊するということです」

現代によれば、命の選別は当然ながら、日本でも起きているという。

「4月9日、日本救急医学会は『新型コロナウイルスの感染拡大により、脳卒中などの重症患者を受け入れられない事態が起きている』という声明を発表した」