そして今度のコロナ危機に際して立ち現れてきた論理は、これとも異なるという。世界によると、ひとつには『自国民』の中にも線引きをする、せざるを得ないという論理がある。イタリアが典型だが、医療資源が逼迫するなかで、助ける命とそうでない命を線引きするトリアージ(大事故・災害などで多くの患者が出た時、手当ての緊急度に優先順をつけること=筆者注)の過程で、社会格差、年齢格差が顕在化した。
しかし、もうひとつ、経済を、まるで『自国民』のいのち以上に優先するような論理が急速に顕在化しているように見えるのだという。
感染症は不幸な出来事だが、真の不幸は…
今回の緊急事態宣言を出すにあたって、安倍首相と小池都知事との間で、首都封鎖までするべきだという小池に、安倍は、そこまですると日本経済が壊滅状態になることを恐れ、ある程度の経済活動を残すことを主張し、なかなかすり合わせができなかった。
その結果、いくつかの業種は、「3密」にならないよう配慮するなら営業を認めることとなった。
小池には、3月の連休に自粛宣言を出さず、都内の感染を広げてしまったという大失敗を挽回し、6月に予定されている都知事選を有利に進めようという考えがあったに違いないが、短期決戦でコロナを封じ込めるやり方は、私にはうなずけるものであった。
中途半端な緊急事態宣言後も感染者は増え続けている。安倍首相は、遅ればせではあるが、全国に緊急事態宣言を広げ、自宅で犬とくつろいでいる動画をツイッターで流し、自宅で過ごすよう訴えたが、かえって、多くの国民の反発を買ってしまった。
緊急事態に対応できない無為無策の政権には、怨嗟の声が広がっている。
週刊ポスト(4/24号)で芸人のビートたけしがいうように、「こんな世界的なピンチを、疑惑だらけの政権に託すしかないんだからさ」である。このままでは、「ニッポン中で首を吊る人間が出てきちまうよ」(たけし)
さらに、「『かつてない規模の』『強大な政策パッケージ』とかデカいことばかり言ってるのが逆に白々しく見えちゃう」「カミさん(妻の昭恵=筆者注)にも強く言えないような人が、ニッポン社会全体に自粛を呼びかけているんだから笑っちゃう。安倍さんは、『緊急事態宣言』の前にまず『家庭内緊急事態宣言』を出すべきだったね」
新型コロナウイルス感染拡大は不幸な出来事だが、真の不幸は、この国を託すのが、安倍や小池のような政治家しかいないことである。