まどろっこしい「外出しないよう要請すべきと考えます」

ことばは相変わらずまどろっこしかった。たとえばこんなフレーズがあった。

「生活の維持に必要な場合を除き、みだりに外出しないよう要請すべきと考えます」
「外出自粛をお願いします」
「3つの密を避ける行動を徹底していただくよう、あらためてお願いいたします」

有事の際は、こんな遠慮がちな表現は避け、こうストレートに言うべきだ。

「外出しないよう要請します」
「外出を自粛してください」
「3つの密を避ける行動をとってください」

外出自粛を強く呼びかけ、再三「都市封鎖ではない」はズルい

なにより戸惑うのは、外出自粛を呼びかけながらも、そこまで厳密にやらなくてもいいんだ、とも聞こえたことだ。特に「都市封鎖ではない」ということが強調されていた。

「今回の緊急事態宣言は、海外で見られるような都市封鎖、ロックダウンを行うものではまったくありません。そのことは明確に申し上げます。今後も電車やバスなどの公共交通機関は運行されます。道路を封鎖することなど決してありませんし、そうした必要もまったくないというのが専門家の皆さんの意見です」

執拗なまでに、そこまで深刻なものではないのだと強調する。法的に強制力はないということを印象付け、パニックを防ぎたかったのかもしれない。だが、ここまで言われると、あまり厳しくなくても大丈夫なんだ……と奇妙な安心感を与えてしまう。

安倍首相はこうも言っていた。

「専門家の皆さんの見解では、東京や大阪での感染リスクは、現状でも不要不急の外出を自粛して普通の生活を送っている限り決して高くない。封鎖を行った海外の都市とはまったく状況が異なります」

われわれは日々、アメリカやヨーロッパの惨状を見聞きし、恐怖におびえている。それにもかかわらず安倍首相は「状況が全く異なる。だから、そこまで過敏になる必要はない」と断言しているようにも聞こえる。もし、この断言が真実であれば、われわれは安心できるが、筆者の周囲に安心している人はひとりもいない。