最近、宮島さんは部下の上司に対する目線が日本とは違うことに気がついた。給与改定など人事考課の査定の最終権限を持つ上司のいうことは「はい」と二つ返事でいうことを聞くものの、権限のない上司の指示に対しては「ええ……」と曖昧な返事を返すだけ。上司観が違うのだ。よかれと思い、段取りのつけ方などアドバイスをしても、直属でなければ暖簾に腕押しのような反応しか返ってこず、「無理にすることもないか」と半ば匙を投げている。
この点について、別の日本人ビジネスマンは次のように説明する。「日本のサッカーのスタイルを思い出してほしい。選手はお互い協力しながら組織としてゴールを狙っていくのが日本だが、中国人はそのように仕事を進めていく発想がない。組織全体への目配りができないため、自分の能力も直属の上司に評価されさえすればいいと考えてしまいがちだ」。こうした発想が、上司に対する贈り物を重要視する習慣や、ひいては中国の賄賂社会につながっているのかもしれない。
賃金制度の違いからくる弊害を指摘する声もある。中国の工場労働者は日給制で働くケースが少なくなく、「その日に与えられた仕事だけこなせばいいと考えがち。その結果、長期的な視点に欠け、品質改善を目指そうとする日本人上司の指示も、右の耳から入って左の耳に抜けていくような状態だ」と、前出のアパレル関係で中国ビジネスに携わる日本人ビジネスマンはいう。
一方、都内の在日中国人の経営する企業で働く岡田隆さん(仮名)は、中国人経営者の「中長期的展望の欠如からくるモチベーションの低下」に悩まされている。上司である経営者がそうなる背景について岡田さんは、「中国企業というより今の中国社会全体の変化が速すぎて5年先のことなどわかるわけがないという開き直りから、『今が一番大事』という傾向が強すぎるのではないか」と見ている。
逆にだからこそ中国人ビジネスマンは臨機応変に状況に対応する能力に長けているのかもしれない。しかし、行き当たりばったりの感もいなめず、ビジネスが短命に終わるリスクがどうしてもつきまとう。
それにビジネスの成否にとって不可欠な仕事に対するモチベーションにも関わる違和感や違いを抱えたままでは、いくら資金提供されても、「WIN-WIN」の関係の構築は難しい。ではどうしたら、こうした違いを日中両企業は乗り越えていけるのだろう。