リゾートマンションは共用施設が充実しているため、丸山さん夫妻が毎月支払っていた管理費と修繕積立金はあわせて8万円。しかし、滞納だらけで管理組合も建物もボロボロ。

「引っ越して5年で夫が亡くなり、その数年後に妻も亡くなりました。問題は残ってしまったリゾートマンションです。相続があったことを知ってから3カ月以内であれば、相続を放棄することができる。放棄すれば他の法定相続人に行くことになる。もしも相続したくなければ、法定相続人になる可能性がある者全員が放棄しなければならない。気がつけば自分だけが放棄していなかったというパターンもある。放棄できることを知らなかったでは済まされません」

紆余曲折あり、丸山さん夫妻のリゾートマンションはひとりの親族が相続人に。しかし、越後湯沢に移り住むわけもなく、誰も住んでいないリゾートマンションの管理費と修繕積立金を払い続けるハメに。いち早く手放したいに決まっているが、新しい買い手は見つかるわけもない。

世帯主の年齢が65歳以上の世帯の貯蓄の分布(2人以上の世帯)貯蓄2000万円以下の世帯は60%以上

リースバックは経済的余力のない証拠

住み慣れた持ち家から離れたくはないが、キャッシュは欲しい。そんな要望に合わせた「リースバック」という制度がある。「ハウス・リースバック」というサービスを展開しているハウスドゥでは、近年、年間の問い合わせが増加したという。16年は3384件、17年は6907件、18年には9000件を超えたそうだ。

わかりやすくいうと、賃貸借契約付き売却。持ち家などの不動産を投資家や不動産会社などに売却し、売却先と賃貸借契約を結ぶ。所有者はキャッシュを得たうえで、そのまま住み慣れた家で過ごせるというのが人気のポイントだ。使い方によってはリタイア組にとって心強い制度ではあるが、そううまくもいかない。

「賃貸契約の家賃は、売却額に対する割合で決まりますが、購入側のリスクもあるため利回りは大きい。定期収入がない場合、毎月割高な家賃の支払いが続く不安感は否めません。年金や貯蓄などで余力があるのなら大丈夫かもしれませんが、そもそも余力があるのならリースバックはしませんからね。長生きすることを考えると、将来に不安が残る選択肢ではあります」

毎月の家賃を抑えたいのであれば、売却額を低くすればいい。しかし、得られるキャッシュが少ないぶん、なくなるのが早まるだけではある。

また、持ち家を担保にまとまった額を借り、利息を払いながら、その家に住み続けられる「リバースモーゲージ」という制度もある。