「病気への現金の備えは50歳くらいで300万円ほどあれば何とかなります。これは老後の生活費貯金とは別ですよ」(汀氏)

最近は入院してもある程度経過すると病院を追い出されてしまう。本調子に戻らなければ自宅療養だが、自宅療養では医療保険が出ない。そのためにも現金の備えが必要なのだ。

おひとりさまの場合、入院するのも一苦労。入院の保証人が必要なのだ。通常、保証人として身内が要求され、友人は認めない病院もある。手術でも全身麻酔でも保証人の署名が必要だ。甥や姪がいるなら普段から交流を持ち、遺産を渡す約束をする代わりに保証人を頼んでおくといった努力が必要だ。

また、有料で保証人を引き受ける保証会社は、住宅賃貸時や入院時の保証人引き受けサービスを提供している。

万一の場合に備えて緊急連絡ノートもつくっておきたい。

「人間関係の“棚卸し”にもなると思うんですよ。年に一度くらいは見直し、昨年は甥を最優先にしてたけど、やっぱり姪のほうが頼りになるなどと言いながら名前を消したり加えたり」(FPの山田静江氏)

おひとりさまは、周囲とのつながりを断絶する生き方ではなく、むしろ身内がいないぶん、つながりを増やす努力が不可欠なのだ。

(撮影=宇佐見利明)