三人に二人は失業を経験
一方で、回答者の約三人に二人は、キャリアのどこかで失業を経験しているという。フィンランドの2019年10月現在の失業率は約6パーセント。不況や業績不振になると、あっけなく社員をレイオフ(一時的な解雇)する。減給や痛み分けでみんなで乗り切ろうというよりは、とりあえずスタッフをレイオフして乗り切るのだ。
そして業績が回復すると、信じられないほど簡単にレイオフした人たちを再雇用する。一時的ではなく、完全に解雇もしくは自主退職を促す場合も、もちろん再就職や学び直しを支援したり、一定期間の給料は保障したりするなどの措置はある。
「合理化、合理化で人員削減の機会は多いけれど、ハリウッド映画のように解雇を一方的に告げられて、箱に荷物をまとめて泣きながら会社を出るなんてことはないから、ましかもしれない。従業員の権利は守られているのが、まだ救いだし、フィンランドのいいところかな」と友人は言う。
学びはピンチを乗り切る最大の切り札
同調査によると、失業経験を持つ人の多くは失業期間が半年未満だったが、2年以上続いた人も4分の1いたという。失業が日本よりも身近なフィンランドでは、そのピンチを乗り切る最大の切り札として、学びがある。
ちなみに、雇用経済省が2018年に行った調査では、この1年の間に研修や勉強をしたという労働者数が、以前より増えている。日本にもあるように、雇用主が仕事関連のスキルや知識を高めるために提供するトレーニングや、一般的なソーシャルスキル、ウェルビーイング、安全衛生、ITスキルなどといった研修はフィンランドでも人気だ。雇用主が社員の研修や能力開発に力を入れることは、本人や企業にとってもメリットがあるが、社員のモチベーション向上や早期退職の防止になり、定年以降も、より長く継続して働く効果もあるそうだ。
それに加え自主学習、仲間や同僚たちと学び合うピア・ラーニング、実習など、学びの形は様々だ。フィンランド統計局によると、民間企業では仕事に関する自習、遠隔・eラーニングがより一般的になっていて、従業員の38パーセントが将来の転職を見据えて勉強しているという。よりステップアップや自分の新たな可能性のために、受け身ではなく能動的に学びに取り組む様子がうかがえる。