フィンランドでは転職や昇進のために勉強する社会人が多い。フィンランド大使館で広報を務める堀内都喜子氏は、「勉強がメインのフルタイムの学生は、授業料無料で生活手当も支給される。学ぶ意欲さえあれば年齢や性別に関係なく人生のやり直しができる」という――。

※本稿は、堀内都喜子『フィンランド人はなぜ午後4時に仕事が終わるのか』(ポプラ新書)の一部を再編集したものです。

スキルを持った人材とそれを支える教育や研修
写真=Riku Isohella/Finland Promotion Board

フィンランドでITスタートアップが増えているワケ

フィンランドには大切な強みがある。それは、専門性や高度なスキルを持った人材とそれを支える教育や研修だ。

例えば、フィンランドで今、IT技術を利用したスタートアップが増えているのは、専門知識を持った優秀なエンジニアが数多くいるからで、彼らが大学や企業で培った知識と経験がスタートアップに活かされている。

フィンランドではもともと卒業してすぐに職場で即戦力として働けるよう、職業高校や専門職大学に進む人も多い。看護や社会福祉関連の職業、電子制御、プログラミング、設計、エンジニアリング、機械のオペレーター、料理や美容などのサービス業など、学べる職業の幅は非常に広い。こういった専門職大学は総合大学と違って、みっちりと授業があり、現場での実習に多くの時間が割かれている。

私も以前、職業専門学校に招かれたことがある。家政の学校では、一緒に日本の家庭料理を作ったり日本の文化について話したりした。学生たちは料理や清掃、介護などの仕事を将来の視野に入れて学んでいたが、すぐに就職というよりは、何の仕事をしたいのかわからないので、ここで学びながら先を考えている学生が多かった。その後、調理、経営、介護や保育といったより高度な専門職大学を選びそれぞれの道に進んでいくらしい。