フィンランド人はオンとオフの切り替えがはっきりしている。フィンランド大使館で広報を務める堀内都喜子氏は、「彼らは夏に1か月間もの長期休暇を取る。だから最初から『1年は11か月』と割り切っているのだ」という——。

※本稿は、堀内都喜子『フィンランド人はなぜ午後4時に仕事が終わるのか』(ポプラ新書)の一部を再編集したものです。

画像提供=Visit Finland

フィンランド人の多くは7月にオフィスにいない

7月にフィンランド人にメールを送ると、「アウト・オブ・オフィス。8月××日まで夏期休暇中です」と、自動返信が送られてくる。しかもオフィスに戻ってくる時期は、1か月以上も先だったりする。フィンランド人のライフスタイルを知っていればもう驚くこともなく、そもそも7月にメールを送ろうとすら思わないが、あまりフィンランド人とのつきあいがない日本人からしたら衝撃だろう。

フィンランド人は、普段から残業を極力避け、オンとオフの切り替えをはっきりしているが、その文化は有給や夏休みの取得にも見られる。「休むことは生産性のためにも必要」という認識を皆が持ち、有給を使い切ることは社員の権利だと断言する。きっちり休んで心身共にリフレッシュするからこそ、その後に集中して働ける。頑張って働いてから休む、というよりむしろ、休むから後で頑張れるといった感覚なのかもしれない。

夏休みは通常6月から8月末の間にとるのが普通だが、中でも伝統的に7月は、夏休み真っ盛りだ。もともと農業中心だったフィンランドでは、冬に必要な大量の干し草を7月に準備する必要があった。準備にはかなりの労力が必要で、かつては家族どころか親せき総出の仕事だった。都会に出ていたり、工場などで働いたりしている人も長期の休みをとって、干し草づくりの仕事を手伝ったそうだ。

そんな名残から、夏期休暇は7月というのが定着したという。しかも、7月は一年の中で最も日照時間も長く、気温も高い。暗く寒い冬の長いフィンランドでは、7月が休みを楽しむのにもってこいなのだ。