フィンランド人の暮らしや考え方はシンプルだ。フィンランド大使館で広報を務める堀内都喜子氏は、「人間関係もあっさりとしており、互いに深くは立ち入らない」という——。

※本稿は、堀内都喜子『フィンランド人はなぜ午後4時に仕事が終わるのか』(ポプラ新書)の一部を再編集したものです。

友人たちととる食事
写真=KESKI/Jukka Rapo/Finland Promotion Board

会社に定時や朝礼はない

フィンランドのデザインや建築を語る時、よく感じるのはシンプルで機能的。派手な美しさを追求したというよりも、スッキリとした自然な美。そして使っていて便利だったり、頑丈だったりもする。それはフィンランド人の暮らし方や働き方にも感じることができる。

家に行くと、それほど広くはない部屋に必要最低限の家具が置かれ、スッキリとしている。物もそれなりにあるのだが、収納をうまく使い、余分なものは置かない。子どもがいても、いろいろとおもちゃが広がっているのは子ども部屋だけ。他の部屋はシンプルなままだ。

職場も、今は極力ペーパーレスになったこともあり、書類で山積みの机を見ることは少ない。たとえ個室でなくとも一人ひとり、スペースにゆとりがあり、色遣いや家具の統一感も考えられていて、気持ちのいい空間が作られている。

またシンプルで心地いいのは空間だけではない。その働き方やライフスタイルもまたシンプルだ。朝起きて、さっと簡単な食事を済ませて出勤。通勤時間は平均20分ほど。通勤手段は、首都圏であれば地下鉄や路面電車、バスなどあるが、それ以外は主に車だ。最近は、通勤時間を運動にあてるため、自転車や徒歩の人も中にはいるが、冬が長いのでやはり天候を考えると車が一番便利だ。

思い思いの時間に出社して朝礼などもなく、お昼もササッと食べて、残業はせず、夕方に仕事を終える。その後は、家に帰って趣味やスポーツをし、夜はたっぷり眠る。