人間関係もシンプルで心地よく

フィンランド人は人に頼ることが少し苦手で自立した人たちだが、助けを求められて冷たく突き放す人たちでもない。自ら手を差し伸べて助けてくれることはなくとも、頼られればできるだけそれに応えようとする。だから親切の安売りをしたり、感情豊かに表現したりすることはないが、慣れると信頼できる人たちだと感じられる。

以前、私が知人を亡くし、落ち込んでいた時、一緒に泣くわけでもなく、慰めの言葉をたくさん並べるわけでもなかったが、「それが人生」と冷静にひとこと言い、泣いてる私を放っておいてくれた。最初は冷たいなと思ったが、そう言ったのは彼女だけではなかった。フィンランドの友人がみんな冷静に受け止めて「残念ね、お悔み申し上げます」に続いて「それが人生」と言い、過度に感情を表すわけでもなく、変に励ますのでもないのが、不思議でもあり、最終的には心地よくもあった。

オフィスのキッチンスペース
写真=Jarmo Mela/Finland Promotion Board

他にも、誰かが失恋した時、誰かが子育てで悩んでいる時、病気がわかった時、どうしても都合が悪くて家族の冠婚葬祭に参加できなかった時、仕事をクビになった時、「それが人生、仕方ないね」とあまりにも本人も周りもあっさりしていて、戸惑う時がある。

一歩引いた関係が心地いい

この戸惑いはなんだろうと考えると、日本は共感を示すことを強く求められているからではないかとの結論に行きつく。本人と一緒になって、怒り、悲しみ、悩み、考える。だが、フィンランドはどちらかというと「そっか」と静かに受け入れて、余計なことはあまり言わない。

そういった、一歩引いた人間関係は、おもてなしのコンセプトにも現れている。フィンランドは、相手に選択肢を与え、自由な時間と空間を与えることが最高のおもてなしであると考えている。慣れないと、とまどいを感じるかもしれないが、その背景にある考えを知ると、心地いい。ベタベタ密着した関係よりも、深呼吸ができる、スペースのある人間関係が求められている。

だから、何か話した時に、「うん」と聞いてはいても、大きく感情を表したり、言葉をかけたり、変に同情することもない。でも、言葉はなくとも否定されているとは感じないし、そのあっさり感もなかなか心地いい。