1月30日には始動していた台湾の経済対策

新型コロナウイルスの感染拡大や予防措置に伴う経済的ダメージに対しても、台湾当局は日本より1カ月以上早くから手を打っている。日本では3月3日にようやく、2700億円の予備費を新型コロナウイルスの緊急対応策に使う方針が打ち出され(用途等はその時点では未定)、3月12日には「4月に緊急経済対策を打つことを検討」というニュースが流れた。だが、台湾の蔡英文総統は早くも1月30日に、経済への影響を緩和するための「八大措置」を打ち出し、各省庁に特別予算案の作成を指示している。

八大措置の内容は、以下のとおりである。(1)特別予算の編成(2)株式為替市場の安定(3)公共投資の加速と民間投資の促進案(4)百貨店や商店への支援策(5)運輸、観光、レジャー産業への支援策(6)中国人旅行客減少による損失の補填ほてん(7)生産ラインの整備、サプライチェーンの調整、台湾国内での受注振替などの企業支援(8)企業の生産活動と予防措置への支援

蔡英文総統のこの指示を受け、蘇建栄財務部長(日本の財務相に相当)は同日、株式市場安定のために「国家金融安定基金」から2000億台湾ドル(約7100億円)を支出し、相場を下支えする準備があると発表。蘇貞昌行政院長(首相に相当)の指示で、各省庁は新型コロナウイルスによる被害の算定、有効な措置、そのための予算案の準備に取り掛かっている。日本の国会にあたる立法院でも関連法案成立の準備が行われ、2月25日には19条からなる「厳重特殊伝染性肺炎予防治療および復興救助特別条例」が制定・公布された。

コンサート等への特別補助も

25日の法案成立を経て、27日には「中央政府厳重特殊伝染性肺炎予防治療および復興救助特別予算案600億元(約2150億円)」が閣議決定され、立法院(国会)に送られた。そのうち、予防・治療関連(病院の隔離処置費用、集中検疫場所の設置費用、防疫補償金、物資購入など)の予算は196億元(約700億円)で、残りの404億元(約1450億円)は経済復興予算として計上されている。

経済復興予算の内訳は、中小企業向け135億元(約483億円)、製造業向け25.8億元(約92億円)、農漁業向け34.9億元(約125億円)、観光旅行宿泊業向け73億元(約261億円)、運輸業向け86.9億元(約311億円)、内需型産業支援(レストラン、小売、商業地区、市場、夜市など)向け39.5億元(約141億円)、芸能文化産業向け8億元。特に文化部(文化省に相当)が、省内予算7億元を追加した15億元(約54億円)で、コンサートや芸術活動の特別補助政策を打ち立てていくとしているのが興味深い。