9月、新装オープンした銀座三越。女性客でひときわ賑う、新規テナントがあった。意外や、あの懐かしの「オニツカタイガー」だった。「この靴、カワイイ。あ、服もあるの!」。30代くらいの女性が目の前で衝動買いした。
アシックスの創業時(1949年)の社名はオニツカ。77年の合併を機に現社名になると、オニツカタイガーの歴史は一度途切れたが、2001年に復活した。
同社は、ランニングブームでシューズが好調だが、少子化で「部活人口」が減るなど、「競技用」だけでは心細い。
そこでオニツカを、レトロモダンな「スポーツファッション」ブランドに育て、アパレルも展開する狙いだ。
しかし、同社の昨年度の総売り上げ約2240億円に占める、オニツカの割合は5%にも満たない。日本の職人の手作りによるスニーカーなどは海外でもプレミアが付くほど人気だが、アパレルがどうにも振るわない。
反転攻勢に出たのは今夏。新機軸を打ち出すべく、ユナイテッドアローズ(UA)と「OT プランニング」を設立。そこで企画した、冬山用の靴をベースに、街歩きにも合うデザインにした新作モンテポカラ(写真)が大ヒットした。
「UA の商品企画力や販売網も生かし、1カ月で数百足売れました」(OT プランニング・山田裕也氏)
さらに、アパレルも秋冬物からパリコレに参加したデザイナー・岩谷俊和氏の起用を決断。おかげで斬新なポンチョやウインドブレーカーなどが誕生した。撥水性や通気性などの機能性に、ポップで遊び心の利いた色遣いやデザインをプラス。冒頭の銀座OLやビジネスマンが一目惚れ買いするらしい。
「スポーツとファッションを融合し、オニツカを街着にもランニング・自転車・山歩きにも使える服にしたい」(同)
案外、カジュアルフライデーに、颯爽と「全身オニツカ」も悪くない!?