食材としての人気が高まるきのこ。だが、きのこの魅力はおいしいだけではない。食や自然観察の対象としての関心にとどまらず、小説、映画、マンガ、美術などに描かれたきのこを探し求め、きのこをモチーフにした雑貨を集め、きのこプリントのファッションを身にまとい、時には自らきのこ作品を創作する、そんないわば、文化の森できのこ狩りを楽しむ人々が増えている。そうした“きのこカルチャー”にはまる仲間同士を“菌友”と称したりもするという。

京都のカフェで8月に行われたきのこライター・堀博美氏のトークイベントの模様。壁にもきのこ。

京都のカフェで8月に行われたきのこライター・堀博美氏のトークイベントの模様。壁にもきのこ。

2010年は、こうしたきのこカルチャーの盛り上がりを物語る本が相次いで出版された。1つは日本で唯一の“きのこライター”を自称する堀博美氏の『きのこる』(山と渓谷社刊)。もう1つは写真評論家と同時に熱心なきのこマニアとしても知られる飯沢耕太郎氏の『マジカル・ミステリアス・マッシュルーム・ツアー』(東京キララ社刊)。どちらも、きのこにまつわるグッズ、作品、事象を網羅し、愛着たっぷりに紹介している。

2冊の出版に呼応して、青山ブックセンター、ジュンク堂書店などで“きのこフェア”が実施されて人気。きのこ関連書だけでなく、きのこをあしらったTシャツやストラップなどのグッズも同時に展示販売された。

11月に出版予定の『きのこ文学名作選』(港の人刊)の編者でもある飯沢氏は「この盛り上がりは5年ほど前から顕著。特に若い“きのこ女子”の活躍が目立つ。閉塞感のある時代の中で、きのこの自由な存在感が共感を呼ぶのかも」と分析する。

「表に出てこなかったきのこ好きが、今は『きのこが好き』とカミングアウトしても構わないと感じて行動しだした」と話すのは堀さん。これからのヒットのキーワードの1つとして、「きのこ」をチェックすべき!?