そもそもカゼの引き始めも医療機関に行く意味はない

例えば、カゼの引き始めと言われる、ごく早期には、私たち医者も、カゼかカゼでない疾患かを判別できない。さらに「カゼの引き始めに早めに服用すれば、カゼをこじらせることなく、早く治せる薬」も存在しない。つまり、カゼの引き始めに医療機関を受診する意味は無いのだ。

私は、カゼの引き始めに受診してしまった患者さんには、「今後、もしどんどん悪化して、37.5度以上の発熱が少なくとも4日以上続いたら、必ず受診してください。もちろん熱が持続しなくても、日ごとに悪化する、いつもと違う、息苦しい、水分が取れないなどのときは即受診してください」と言っている。その場合は、普通のカゼである可能性は低いからだ。つまりこれが、本来、医療機関を受診すべき目安であると言える。

だから政府も、そのようにアナウンスすべきだったのだ。

とは言え、自覚症状というのは、個人の主観に基づくものだから、Aさんがつらいと感じる症状を、Bさんが同様につらいと感じるかどうかは分からない。「これはなんかいつもと違うぞ」という“素人の勘”が、私たち医者の見立てより正しい場合さえもある。「いつもと違う」「日ごとに悪化している」場合は受診するように、と言っているのはこのためだ。

新型コロナについては、今後ますます感染者が増えてくることが想像に難くない現状、さらに検査自体が一般の医療機関でまだ手軽にできる体制にないことを考え合わせると、「新型コロナウイルス感染症の確定診断がついていない場合であっても、少なくとも37.5度前後以上の熱が4~5日以上の期間にわたって遷延し、せきなどの呼吸器症状を伴う場合であって、インフルエンザやマイコプラズマなど他の感染症の確定診断がなされていないもの」は、社会的に新型コロナウイルス感染症として取り扱うとするのが安全ではないかと考えている。

カゼ症状のある人は全員「新型コロナウイルス疑似症」だ

そして、無症状やごく軽症の人にも検査陽性となる人がいるという事実を踏まえれば、この症状ほどではなくとも、少なくとも「カゼ症状」の人についても「新型コロナウイルス感染症疑似症」として、出歩かない、もちろん登校も出勤もしない、ということを徹底すべきではないだろうか。

この認識が広まれば「カゼでも絶対に休めない」という社会こそが歪であると多くの人の認識が変わるだろう。「新型なら休まないといけないのですが、カゼなら休めないので」という理由で検査を受けるためだけに、ごく軽症で受診する必要もない。「陰性証明書」や「出勤(登校)許可証」という無意味な書類も一切不要となるだろう。

重症肺炎からカゼと見分けつかない軽症、さらには無症状の人まで混在していて、診察だけでは見抜けないし、国民全員に検査できるわけでもない。つまり少なくともカゼ症状のある人は全員「新型コロナウイルス疑似症」だ。「カゼなら絶対に休め」だ。人にうつされる心配よりも、人にうつす心配をしよう。

2月17日、加藤勝信厚生労働大臣は記者会見で「発熱などの風邪症状がみられるときは会社や学校を休み、毎日検温をして結果を記録していただきたい」と述べた。