体力のない企業には国が手厚く財政支援を

休業しても、収入がある程度補償されるのであれば、療養に集中できるし、職場や周囲に感染を広げるリスクも軽減できる。職場に感染症が蔓延して、企業がその活動全てを停止せざるをえない状況に追い込まれるよりは、事業者にとっても、よっぽどリスク管理上のメリットがあるのではないか。

木村知『病気は社会が引き起こす インフルエンザ大流行のワケ』(角川新書)
木村知『病気は社会が引き起こす』(角川新書)

ただこれらの手当を、すべての企業が出せるとは限らない。そのような資力や余裕のない中小企業や小規模事業者に対しては、国が積極的に財政出動し補助すべきであろう。それは憲法第25条で規定されている国の責務であるとも言えるだろう。

この際、私たちすべて、企業経営者、政府関係者すべての意識改革を行うべきだ。

「カゼくらいで仕事を休むなんて迷惑千万だ」などと誰にも責められることなく休める社会を作るには、私たち一人ひとりの意識改革が早急に求められる。

体調不良を感じた個人は、周囲に気がねすることなく率先して休む。同僚はいつ何どき自分も体調不良によって休む立場となるのかわからないのだから、休んだ人を責めることなく休ませる。企業は休んだ人に不利益な取り扱いをせず、金銭的手当を十分に行う。体力のない企業、自営業者、傷病手当金を得られない労働者には、国が手厚く財政支援する。病気で休んだ日数を有給休暇から差し引くことを罰則付きで禁じるとともに、「有給病欠制度」を確立するという政策も必要だ。

新型コロナを機に慣習を根本から改めよ

さらに進めれば、たとえ具体的病名を記した診断書を提出せずとも、体調不良者の病気休暇を認定するという方向に、多くの人の認識を転換していくという議論も始めていくべきだろう。

新型コロナウイルスという「新型感染症」は、これまでの私たちが当然と考えていた慣習や認識、風土について、根本的見直しを迫る非常に貴重な機会を与えてくれている。またいつ何どき、「新型感染症」が私たちの直面する危機として上陸してくるとも限らない。

この機会を逃すことなく、今こそ私たちはパラダイムチェンジすべきではないだろうか。

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