ですから私は、中国がデジタル人民元で、ドル中心の国際秩序に挑もうとしているという最近の論調に同意できません。人民元をデジタル化しても、為替を自由化しないかぎり世界の基軸通貨になれませんし、為替の自由化は民主主義体制にならないかぎり実現しないからです。

中国はいずれ分裂する

デジタル通貨から話は逸れますが、今、進行中の香港の民主化運動から、中国の将来を予測してみましょう。

まず、中国は大国ではありますが、多くの内戦を繰り返して今に至っていることを忘れてはなりません。中国は、内に脆さを抱えた巨人であり、“統一された中国”は神話にすぎません。いつ何時、些細なことがきっかけとなり、国が崩壊しても不思議ではないのです。

中国政府はその危険性を十分に理解し、統一国家を維持するため、非常に巧妙な運営をしてきました。具体的には、資本の移動を国内で自由化させることで、独自の金融政策と為替相場を確保し、独裁体制を維持してきました。中国政府は、一方では自由を与えていると国民に信じ込ませ、もう一方では、自由世界から疎外されている国民を互いに監視させることで民主化を阻止してきたのです。

ところが、自由市場は有産階級、つまりブルジョワジーを生み出します。世界の歴史を見れば、ブルジョワジーが膨れ上がると、民主主義が求められ、独裁政治が排除されます。この流れの中にあるのが、今の香港です。私の計算では、あと10~15年くらいすれば、中国は全体主義から民主主義に転じるでしょう。このとき、国が解体され、2つ、3つの民主主義国家が生まれる可能性も否めません。

世界最大の脅威北朝鮮に騙されるな

さて、次に国際政治の未来に関する話をしましょう。

歴史の過ちは繰り返される

20年、世界最大の脅威は北朝鮮です。これは間違いありません。アメリカの対北朝鮮政策はお粗末なもので、とりわけ18年6月にシンガポールで行われた米朝首脳会談は大失敗でした。トランプは、交渉段階にもかかわらず、非核化を実現するという金正恩の大嘘を信じ、核開発を継続させるチャンスを与えました。金正恩の手のひら返しは、昨今の報道のとおりです。

米朝首脳会談の過ちが意味することは何でしょうか。

大前提として、北朝鮮は日本だけでなく、中国やアメリカの領域を射程圏内に収める長射程ミサイルを保有しています。その北朝鮮に対してアメリカは、「あなたは核兵器を保有していませんから、私たちは手を出しませんよ」と言ってしまいました。イランに対して核開発を徹底的に阻止し続けている張本人が口にする言葉ではありません。北朝鮮が核放棄に応じなかったとき、アメリカは、日本や韓国に対して「核をつくるな」と言える立場でいられるでしょうか。