ロンドン大会の開会式を覚えていますか。産業革命や国民保健サービスなどイギリスの世界的な功績を前面に出し、ビートルズやミスター・ビーンなど世界を熱狂させたエンターテインメント要素を取り込み、あげくに『007』のジェームズ・ボンドを演じるスタントマンがヘリコプターからエリザベス女王と降り立つという、いっとき世界を席巻した大英帝国の伝統と威光、ユーモアと親しみやすさを世界に見せつけました。イギリス一色の見事な演出でした。

ロンドン五輪の開会式が英国人に行きすぎた自信を与えた。
ロンドン五輪の開会式が英国人に行きすぎた自信を与えた。(時事通信フォト=写真)

あの開会式は、イギリスが第2次世界大戦以来、失っていた威信を取り戻した場と言っていいでしょう。この見事な開会式が「大英帝国は偉大。誰の力も必要としない」という過信に繋がり、イギリスのEU離脱の引き金になったと私は見ています。

オリンピックという巨大な祭典の場で、東京が世界に向けて発信するものが、もし「日本は最高だ!」の一色であれば、日本の未来は破滅的です。逆に「国境を超えて団結できれば素晴らしい世界が待っている」というメッセージであれば、問題はありません。ロンドン大会の開会式は、たとえ開会式そのものが驚くべき素晴らしいショーであったとしても、行きすぎた自信とナショナリズムを生まないための反面教師として記憶しておくべきです。

自分ファーストがまん延している

ブレグジットに見られるように、今日の世界は国家も市場経済も近視眼的で、重要な決定が短期的な視野のもとでなされています。ナショナリズムの台頭など思想の危機も分断を進めています。要するに、今日のイデオロギーは勝手気ままで、社会においても、個人の私生活においても「自分ファースト」(自分第一)なのです。しかし、他者を顧みない利己の追求が破滅を呼ぶことは明らかです。

20年からは「合理的な利他主義」という新しいイデオロギーが根付くことを私は願っています。繰り返しますが、他者のことを顧みない利己の追求が長続きしないのは明らかです。他者の幸せを考慮してこそ自分自身も豊かになれるのです。他者を助けることが、自分を助けること、利他主義が利己の最善の方法であることを、ぜひ理解していただきたいと思います。

ここで言う「他者」とは身のまわりの人だけでなく、これから生まれてくる次世代も含まれます。次世代の利益を考えて行動することが、個人にとっても最大の利益になることを悟ることによって、私たちは幸せに暮らせます。人文知の宝庫である偉大な日本文化を広く活用し、この先も発展させることは、世界のために有益となり、日本の次世代の利益にもなります。