将来性ランキングOECD最下位の日本

私の研究機関では毎年、次世代の教育、国債、インフラ構築、女性の地位など複数の観点からOECD(経済協力開発機構)加盟国の将来性を格付けしています。最新の統計でも、例年通り、上位を北欧諸国が占め、日本は韓国やトルコなどよりも低い最下位グループの1つです。日本が、とりわけ次世代への備えが遅れていることを認識し、早急に手を打つことを呼びかけたいと思っています。なかでも減り続ける労働人口は、今後の日本の国力にかかわる喫緊の課題です。

人口減対策として日本政府は外国人労働者の受け入れ拡大を目指しています。不安視する声があるようですが、世界経済におけるプレゼンスが弱まっている日本が活気づくには、外国の顧客のニーズを把握し、外国人を魅了し、外国人労働者を受け入れること。要は、未知なものに対して積極的に門戸を開くことだと、私は常々思っています。新しいヒト、モノを積極的に受け入れることで、この先どう進むべきか、答えが見えてくるでしょう。

日本の未来を明るくする処方箋

留意すべきことは、外国人労働者の受け入れによって、目先の人手不足は解消されても、少子高齢化問題の根本解決につながらない、ということです。現に、少子高齢化先進国といわれるフランスの合計特殊出生率に移民が寄与している、という説は間違いで、実際は、第2次世界大戦後からの積極的な子育て支援政策が功を奏したからにほかなりません。

ジャック・アタリ氏

日本が本腰を入れるべきことは、外国人受け入れ拡大以上に、子どもを産み、次世代への備えを進めるための意識改革です。

「これで幸せだから、子どもはいらない」「子どもを産むと家計が苦しいから産みたくない」という利己的な考え方から、「子どもは日本社会の未来であって社会の宝」「子どもを産むことが自分の利益」という価値観に変えていくよう、社会全体の意識改革が必要です。

女性が安心して子どもを多くつくるための最善策は、女性により多くの権利、よりよい仕事を与えることです。私は日本を訪れるたびに、様々なビジネスシーンにおいて、女性の割合がいまだに少ないことを危惧しています。社会は女性に力を与えれば与えるほど前進します。日本は、女性に対するあらゆる形態の差別と暴力と戦い、女性の社会進出と地位向上を目指すべきです。

1つの具体案は、出産後に女性と配偶者に長期休暇を与えることです。夫婦合わせて、生後、合計6カ月の休暇が必要でしょう。日本の未来のため、自分たちの利益のため、政府と企業は連携して、より一貫した家族政策を推進する必要があります。

「合理的な利他主義」と「未知なものに心を開く」。この2つは、日本の未来を明るくする私からの処方箋です。20年、きっと素晴らしい年になるはずです。

(取材・構成=桂 ゆりこ 撮影=宇佐美雅浩 写真=AFLO、時事通信フォト)
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