増える島、なくなる島
砂の採掘は環境に負荷をかけるのと同様に、人間、とりわけ発展途上国の人にも損害を与えている。発展途上国では、違法な活動を規制したり統率したりする手段を国家がもっていないことが多いからだ。
骨材は空気や水と同じく、たいていの場合、金のかからない資源だ。しかし、骨材の採掘には2倍のコストがかかる。増加している沖での採掘のコストと、とりわけほかの経済分野に与える影響という意味でのコストだ。
砂の採掘が著しく増えている発展途上国において、生態系破壊の最初の二次的な犠牲者は漁業従事者だ。たとえばインドネシアでは、海底の集中的な砂の引き揚げ作業がすでにかなりのサンゴ礁を破壊している。多くの種の遠洋性生物や底生生物の暮らしはサンゴに依存していて、現地市場に魚の96パーセントを供給している伝統的な漁師の収入は、つまりサンゴの状況に左右されるのだ。
砂浜で直接おこなわれる採掘や沖での採掘のせいで砂質の入り江の侵食が進んでいるなかで、漁業の次に危険にさらされるのは観光業だ。
アラブ首長国連邦は砂の大半をオーストラリアから輸入
このメカニズムは、とりわけ旅行客がホテルで長時間を過ごすモロッコのような国で密かに進んでいる。そのホテル自体も沿岸部の砂地の上に採取した砂を使って建てられている。しかし危険が迫っていてもなお、どの地域も砂を節約していない。オーストラリアやアメリカのフロリダ州では、すでに定期的に人工的な盛り土をおこなわなければ90パーセントの砂浜が消滅する可能性があるというのに……。
時を同じくして、過度の砂の採掘によってアラブ首長国連邦やシンガポールのような豊かな国や土地の足りない国が国土を増やせるようになった。
たとえば、ドバイのパーム・ジュメイラをつくるためには120億ドルをかけて3億8500万トンの砂と1000万立方メートルの岩が輸入された。ドバイ自体の資源が枯渇しているうえ、砂漠の砂は建築に使うには凸凹が足りないので、タワーや住宅や会社……そして新しい島を建設するためには骨材の大半を輸入しなくてはならない。
今日、アラブ首長国連邦はそうした砂の大半をオーストラリアから輸入している。ここ20年でアラビア半島に骨材を輸出しているオーストラリアの3500以上の会社は利益を3倍に伸ばし、毎年オーストラリアに50億ドルをもたらしている。