砂の大量採掘で「伝統的な漁業区域の決定的な喪失」

一方でシンガポールは、東南アジア、とりわけインドネシアから砂を輸入している。

2015年、シンガポールとマレーシアはフォレスト・シティという新しい「エコロジーシティ」の建設計画を発表した。敷地面積1370ヘクタールの新しい都市は、ジョホール海峡のマレーシア側の4つの人工島の上につくられる。

420億ドルをかけて2035年に完成する予定のフォレスト・シティには6万2000の雇用、70万軒の住宅、ショッピングセンター、インターナショナルスクール、ホテル、病院ができる。この都市は独自の入国システムまで備えている。

フォレスト・シティがエコロジカルで持続可能な都市だとしても、1億6200万立方メートルの砂を必要とする計画そのものは環境にダメージを与えるだろうという見解で識者は一致している。

また、このプロジェクトを請け負っている会社が「伝統的な漁業区域の決定的な喪失」が進み、海底草原とマングローブが傷つくという衝撃的な研究結果を出した。すでにマレーシアの漁師は漁獲量が減っているのはジョホール海峡の開発工事のせいであると異議を申し立てている。

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写真=iStock.com/Damocean
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インドネシアでは24の島が砂の採掘によって地図から姿を消した

インドネシアでは、すでに24の島が砂の採掘によって地図から姿を消した。砂の大部分はシンガポールへ輸出された。シンガポールの国土面積は700平方キロメートルもないが、人口密度は世界一高い。シンガポールがおこなった40年間で130平方キロメートルもの領土拡張は、1960~2010年に3倍になった人口に対処する決め手になった。

シンガポールはさらなる人口問題解決のために、2030年までに100平方キロメートル以上領土を広げようとしている。河川や海岸や砂浜に与える影響など、砂の輸出に関するあらゆる事態を憂慮した周辺諸国(カンボジア、インドネシア、ヴェトナム、マレーシア)は、2002年からシンガポールへの砂の輸出を禁じている。

シンガポールはこの障害から逃れて計画を続行するために、ブラックマーケットの砂に手を出さなくてはならなくなった。