「観光反対!」ではなく価値を極める

そのような負の側面は、観光振興の旗を振っている最中には、なかなか目が行き届きません。ただし現在では「観光公害」の事例が日本のみならず、世界中で見られています。対策を考えるベースはできているのです。日本もそこから習って、適切な解決策を取れるはずです。

アレックス・カー、清野由美『観光亡国論』(中公新書ラクレ)
アレックス・カー、清野由美『観光亡国論』(中公新書ラクレ)

私は「観光反対!」ということは、決していっていません。むしろ「観光立国」には大賛成ですし、今後もそのための活動を続けていくつもりです。

実際、インバウンドは日本経済を救うパワーを持っています。国際的な潮流を日本の宿や料理に吹き込むことによって、新しいデザインやもてなしも生まれていきます。観光の促進は、日本への理解を国際的に高め、日本文化を救うチャンスであり、プラスの側面は大きいのです。

ただし、それらは適切な「マネージメント」と「コントロール」を行った上でのことだと強調したいのです。前世紀なら「誰でもウェルカム」という姿勢の方が、聞こえはよかったかもしれません。しかし、億単位で観光客が移動する時代には、「量」ではなく「価値」を極めることを最大限に追求するべきなのです。

観光亡国論』は、そのような私の危機意識をもとに、内外における数々の事例を集め、問題提起とともに、採るべき方策、解決案を探っています。この本を通じ、日本の「観光立国」にとって、よりポジティブで有効な解決の道筋を示すことができればと願っています。

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