顧客と緊密に結びつくための5原則

口コミマーケティングのターゲットはピンポイントであるだけに、一般のマーケティング活動以上に、対象となる消費者の絞り込みを間違えると致命傷を負うことになる。カウンセリングの領域では、「クライアントは重要な問題を隠していて、表面的には別の問題を持ってくることが多い」と言われている(※注1)。インタビューでは、プロシュマーは本当の課題を隠すというよりは、潜在的な問題に気づいていてもそれを意識化できていないことが多い。そのために、カウンセリングをもとにしたインタビュー技法が有効となる。

口コミマーケティングは手作り感がないと成功しないので、その分担当者が力仕事をする部分が増える。動画製作のカメラマン助手をしてもらうとか、プロシュマーのインタビューに同席してもらうなどである。ところが、担当者に参加してもらうことによって、課題を共有し、企業改革につなげられるという巨大な副産物が得られる。

たとえば、トップの意思決定が遅い企業は、顧客に対応するスピードも遅くなる。商品やサービスに対する悪口が広がった場合、トラブルを引き起こすリスクも増えてしまう。さらに上司と部下のコミュニケーションが悪ければ、大きな事故やトラブルの前兆がつかめずに対応が後手後手に回り、悪い口コミが広範囲にばら撒かれるので、口コミマーケティングはまったく機能しなくなる。口コミマーケティングをすすめるうちにこのような課題が見えてきて、マネジャー層や店舗スタッフの意識に変化が生まれるといった効果が表れる。その意味で、口コミマーケティングは広告活動の原点回帰ではないだろうか。同時に、広告代理店のビジネスモデルの一部変革を余儀なくさせる性質をも持っている。

口コミマーケティングの仕事をしていて、「よい商品はよい企業から生まれる」という当たり前の真理を実感できるようになった。本当によい商品を、本当にほしがっているクライアントに買っていただく、というのが口コミマーケティングの大原則である。「やらせ」や「サクラを使う」などの欺瞞的な手法は厳禁であり、口コミマーケティングを展開する企業には厳しい倫理性が求められる。

企業が顧客と緊密な関係をつくるためには、

(1)顧客の信頼を獲得する
(2)企業が顧客に対して誠実で首尾一貫した企業活動を行う
(3)企業活動の透明性を高める
(4)顧客の要求に敏感に反応する
(5)顧客との約束を守る

という5つの原則を守らなければならない(※注2)。