マトリにも依存症患者の回復を支援する動きが

【塚本】そうだったんですね。そう言えばマトリに再乱用防止対策室ができますよね。これは薬物依存者の回復支援部署ですが、マトリもただ逮捕するのではなく、変化していると考えられるのでしょうか。

塚本堅一『僕が違法薬物で逮捕されNHKをクビになった話』(KKベストセラーズ)
塚本堅一『僕が違法薬物で逮捕されNHKをクビになった話』(KKベストセラーズ)

【松本】捜査官のなかにも、何度も同じ人を捕まえるうちに「これでいいのか」と疑問を感じる人もいるようです。実は2013年頃から、彼らもワークグループを使って社会復帰をサポートするような動きが見られますが、あくまでも捜査官個別の活動なので、サポートに限界がある。それに、彼らは本人から「麻薬をやりました」と言われたら逮捕しなくてはいけないんですよ。それなのに、逮捕せずに更生プログラムを案内するなんて矛盾しているだろうという意見も多い。

そこで、逮捕権を持たない外部の嘱託職員を使い、逮捕に至る前のタイムラグを意図的に発生させて、回復を目指せる仕組みをつくろうと頑張っています。ただし、こうした考えはマトリのなかでは少数派で、旧来の「取り締まってナンボ」という捜査官がほとんどというのが現状です。

【塚本】逮捕するのが法的正義なのであれば、薬物常用者の回復を助ける社会的正義があってもいいですよね。今後、バランスがとれることに期待してしまいます。

【松本】捜査官の6~7割は薬剤師ですから、医療者としての視点も忘れないで欲しいですよね。(後編に続く)

(構成=松本晋平)
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