なぜ、在宅勤務を導入する企業が増えなかったのか

ところで、今回の新型コロナに対する企業の対策では、在宅勤務などのテレワークを活用した事業の継続を図っているのが大きな特徴となっている。

在宅勤務は災害時の本社機能がダウンした場合などに備えるBCP(事業継続計画)の中核の対策に位置づけられている。

BCPとは大地震、テロ、疫病などの発生時に本社機能の分散による指揮・命令系統の確保や従業員の安全と事業の損害を最小限に抑えるための行動計画だ。

テレビを見つめる女性
写真=iStock.com/PhotoTalk
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1995年の阪神淡路大震災で注目され、それ以降、現代にいたるまで少しずつ災害時にBCPの策定に乗り出す企業が増えてきた。

在宅勤務をすすめるGMO、NTT、武田薬品工業……

例えば、東証1部上場のGMOインターネットグループだ。今回の新型コロナによる影響で、中国国内に駐在・出張中の従業員に対し、強制帰国の指示を出すとともに、1月27日から2週間をめどに全従業員4000人を在宅勤務とした。

同社の熊谷正寿グループ代表はブログでこう述べている。

「2011年より、大地震、大災害、戦争、テロ、疫病の蔓延などの有事に備えて、本社機能の移転、在宅勤務体制の構築、N95マスク、ヘルメットなど災害用品の備蓄、そして年に一度の避難&在宅訓練など、いわゆるBCP(事業継続計画)を行ってきました」(2020年1月29日)

同社以外でも今年2月17日にNTTグループがテレワークや時差通勤を推奨。武田薬品工業も国内全拠点の最大5200人超に対し在宅勤務を推奨している。このほかにも新型コロナ対策として在宅勤務を推奨する動きが相次いでいる。