あとは進みたい部門によって異なります。製造部門に行きたいなら、現在タケダには世界に36の工場があり、1万5000人以上が製造部門で働いていますので、リーダーとしては複雑な組織をマネジメントできなければなりません。R&D分野に進むなら、研究、開発、薬事と様々なセクションがあります。どこをやりたいのかを自分で選び、キャリアプランを組み立てる必要があるでしょう。

自分のキャリアのオーナーになれ

――リーダーになるかどうかも会社が選ぶのではなく、社員自身が自分で決めてそのためのキャリアをつくるものだということですね。

自分のキャリアはその人が考えるべきものだと私は考えています。何をやりたいのか、何を達成したいのか、どの部門で働きたいのか、というのは社員ごとに違うからです。だからこそ社員は自分のキャリアのオーナーになるべきであって、タケダはそういう方針に変えています。私の仕事はあくまでそれをサポートすることです。そのためにローカルで働きたい人、グローバルに仕事をしたい人、それぞれにふさわしいキャリアと教育体制を整えています。

また多様な働き方ができるよう、コアタイムなしのフレックスタイム制度や、働く場所を限定しないテレワーク制度などを設けているほか育児をサポートする制度も様々に整えています。このようにフレキシブルに働ける環境を整えているのもその一環です。

――CEOは日頃から感情的になることがないとの評判です。温厚な性格もリーダーの大切な資質ですか。

いいマネジャーとは、安定した態度で臨める人だと思います。マネジャーの機嫌が頻繁に変わると、部下は大変でしょう。私の仕事は組織のストレスを下げることであって、ストレスを上げてはいけないと思います。かといって機械のようにもなりたくありませんから、常に穏やかな態度で臨むよう努めています。チームの成果に満足できないときもありますが、厳しくあたっても問題は改善しません。それよりもサポートをしたり、アイデアを与えたりすることで事態の改善を促すようにしています。それが私の信念です。

――最後に日本の若手が世界で活躍できるリーダーになるために何が必要か教えてください。

1つはよい教育を受けることです。その点、日本は教育環境が整っていますから、心配ないですね。あとは、イノベーション(革新性)というものに常に着目すること。そして海外の経験を積むということです。冒険心と好奇心を持って未知の世界に挑むということですね。そういう性格の持ち主が自分の好きな分野で一生懸命に働き、新しい経験を得るためにリスクをいとわずチャレンジしていけば、日本の若い方も将来、世界を舞台に成功できると思います。

売り上げの海外比率は8割超
(構成=大島七々三 撮影=市来朋久)
【関連記事】
この国で「長時間労働」がまかり通る本当の理由
「ゴーン」という怪物を作り出した日本人の体質
なぜ昭和上司たちはリモートワークを憎むのか
指示待ち社員が生まれ変わる「1対1面談」の魔法
残業を愛する人々が気づかない恐るべきリスク