――今回の統合で全社員の9割が外国籍となり、執行役員クラスで構成されるタケダ・エグゼクティブ・チーム(TET)も11カ国に及ぶ国籍のメンバーで構成されています。にもかかわらずCEOは東京にグローバル本社を構えるなど、日本企業としてのアイデンティティを重視されています。

日本の会社であるかどうかの切り分けに、社員の国籍の比率を用いるのは正しくありません。会社の国籍を決めるのは、ホームベースと歴史です。どこにヘッドクォーター(本社)があるのか、またその会社の価値観がどこから来ているものなのかが重要なのです。

2018年7月にオープンした武田グローバル本社(中央区日本橋本町)。本拠地は日本であることをアピール。
2018年7月にオープンした武田グローバル本社(中央区日本橋本町)。本拠地は日本であることをアピール。(時事通信フォト=写真)

タケダは1781年に日本で創業した日本の会社であり、そのことがタケダという会社を決める要因だと私は考えます。ですからタケダでは世界のすべての社員が、誠実、すなわち公正、正直、不屈という創業時から受け継ぐ4つの価値観(タケダイズム)を大事にしています。

新しく入社する人、特にリーダー層にはこの会社の価値観を事前に伝え、合意してもらえるかどうかを確認します。また海外で新しいマネジャーが入社した場合、「グローバル・インダクション・フォーラム」という入社研修を日本で1週間受けてもらい、タケダの価値観を学んでもらいます。今回の統合に際しても、多くのインダクション・フォーラムを実施しました。研修を受けたマネジャーが自国に戻って現場に伝えることで、組織の隅々までタケダの価値観を浸透させたいと考えています。

タケダの社員が優れた人たちで、彼らをリスペクトしている

――日本の伝統に基づいたタケダイズムは、グローバル企業の根幹となりえるのでしょうか。

私はそう考えています。会社には価値観が必要ですし、目的が必要です。ただほかの国のカルチャーでは、タケダイズムの内容は捉えづらいかもしれません。ですから並行して、患者、信頼、レピュテーション、ビジネスという、行動と判断の基準となる「優先順位」を設けています。この優先順位はタケダイズムをより理解しやすいよう、別のディメンションでかみ砕いたものです。患者さんに対して正しいことをすれば、社会の信頼が醸成され、会社のレピュテーション(評判)がよくなり、それにともなってビジネスもついてくる、という流れです。この価値観をシェアするために、世界各国でトレーニングを実施しています。

――CEOは意思決定をする際、さまざまな人の意見に耳を傾け、参考にすると聞きます。その意図を教えてください。

ご指摘の通り、私は様々なプログラムを通じて、マネジャー、リーダー層ほかいろいろなレベルの人と話し合う機会を設けています。日本でも月に1回、定期的に「ラウンドテーブル・ミーティング」という小規模のグループディスカッションを実施しています。そうした場所で聞いた意見をインプットして、意思決定を行うのです。