子供に勝つ経験をさせるのは大事

――和田さんの受験指導法には「受験は要領」や「数学は暗記だ」という有名なキャッチコピーがありますよね。それも「とにかく受かる」という考えによるんですか?

そうです。みんなそういったやり方を「ズルい」とか「テクニックでしょ」とか言うんだけど、それを知らないで努力が空回りになるほうがよっぽど悲劇だと思うんです。試験に受かれば自信がつくけど、落ちると大概の人はそこで落ち込んだり劣等感を持ったりするじゃないですか。

落ちても「たまたま俺は勉強には向いてなかっただけだから、ほかの世界で生きていこう」って開き直れるんだったらそれでもいい。でも、多くの人はそうはいかない。親や塾や学校から「こういう勉強が正しいんだから、それでがんばれ」って言われ続けて、そこで結果が出ないと劣等感を持ってしまう。人間って、一度劣等感を持ってしまうと、なかなかほかのことにも挑戦できなくなるんですよ。だから子供に勝つ経験をさせるのは大事なんだと僕は思っています。

多くの人が間違った方法で努力をしている

受験は、勝つ人の数が多いんです。東大でも年間3000人は受かります。高校野球だったら、甲子園のベンチに座れる人は年間1000人ぐらいしかいない。ほかのジャンルに比べて人数が多く、テクニックも確立している。だから、そこでうまくいく経験をさせるのは、わりとやりやすい気がするんですよね。

――受験勉強は成功体験を積むのに有効だ、と。

しょせん18歳のレースじゃないですか。大人の世界で勝つことと比べたら簡単ですよね。英語を使う仕事をしている大人は、英語の入試問題を今見るとこんなに易しかったのか、って驚くでしょうし、僕は国語が苦手で全然駄目だったんだけど、国語の入試問題をいま読んでみると意外に易しいんだなと思います。そういう意味で、受験で勝つこと自体は本当はそんなに難しくない。ただ、多くの人が間違った方法で努力をしているのが問題なんです。