自分が絶対に正しいと考える人こそ「バカ」だ

――和田さんは灘校で抜群に成績のいい「本物の天才」に出会ったそうですね。そうした人たちを間近に見ていたからこそ、「自分は天才ではないけど勉強法を工夫することで東大に入れた」という意識があるんでしょうか?

和田秀樹『灘校物語』(サイゾー)

はい。僕は本当に自分が頭が良いとは思わないんです。ただ、上から言われたことしかできない人とか、歴史であれなんであれ答えが1つだと思っている人とか、自分の考えていることが絶対正しいと思っている人は、僕の定義では「バカ」なんですよね。だから、そういう意味での「バカ」になりさえしなければ、人間にはいろんな可能性があるんだと思います。

僕自身も、つい7~8年ぐらい前までは正解を求めるために本を読んでいたと思います。でも今はいろんな考えがあることを知るために読むようになりました。それって、人間としてはだいぶ進歩したんじゃないかなと思うんですよね。

受験勉強なら「受かる」ことだけを考えればいい

――世間では「東大に入る人って、もともと頭が良かったんでしょ」と思われやすいですよね。でも、和田さんとしてはそうじゃない、と。

もちろん、もともと頭が良いから入る人はいるんですよ。だけど9割ぐらいの人はそうじゃないはずなんですね。そうすると、ど根性で勉強するかやり方を工夫するかしかないんです。それで、やり方を工夫する方がこれから生きていく上では柔軟になれるだろうし、ほかのことをやる時間もできると思うんです。

どんなスポーツでも、やり方を教わってから練習しますよね。ゴルフで前に飛ばない人が、前に飛ばないままのやり方で「1000回振って」って言われることはないでしょう。ちゃんと前に飛ばす方法をコーチに教えてもらってから、「そのやり方で1000回振ってみて」という話になる。

ところが勉強になると、みんな自己流でやっているせいで、悪いやり方を続けてしまうケースが生まれやすいんです。勉強に苦手意識がある子供たちの8~9割は、頭が悪いんじゃなくて、悪いやり方のまま努力をしているんだと思います。試験に出ないことを必死で勉強しているとかね。「それもやらないと駄目なんだ」という根性論もあるかもしれないけど、僕は受験勉強なら単純に「受かる」ことだけを考えればいいと思うんですよね。