少子化と大地震の多発で「洋型」が増えた?
墓地には大まかに分けて公営墓地、民営墓地、寺院墓地の3種類がある。このうち公営と民営では、基本的に宗教・宗派を問わず比較的自由に墓を建てられるが、最近は縦長の墓石を使う「和型」よりも、横長や平たい墓石を使う「洋型」を選ぶ人が増えた。東京都内に限ると、洋型のシェアはすでに5割を超えたとみられている。
主な理由は次の2つだ。
1つは、少子化が進み、跡継ぎが女の子だけという家庭が増えたことである。和型の墓石には「○○家」と家名を入れるか宗派の念仏や題目(南無妙法蓮華経)などを彫り込むが、洋型の場合は「夢」「ありがとう」など好きな言葉を選択できる。すると、子供が結婚して姓が変わったり、宗派や宗教が変わったりしても受け継ぐことができるのだ。
もう1つは、1995年の阪神・淡路大震災以来、2004年の新潟県中越地震など全国で大地震が相次ぎ、墓石が倒れる被害がクローズアップされたことだ。当然ながら縦長の和型墓は倒れやすく、横長の洋型は倒れにくいという特徴がある。
私の地元の福岡県でも、05年に起きた最大震度6弱の福岡県西方沖地震によって、各地で墓石の倒壊がみられた。地盤の悪い墓地では約75%もの墓石が倒れたという。
もっとも、かつての和型墓は、石を積み上げるだけか、接着するとしてもセメントを流すだけの場合が多かったが、大地震の多発を受けて、最近はシリコン製の墓石専用耐震接着剤や接着ゲルを使用するようになっており、倒壊の危険性はかなり減っている。
「デザイン墓石」のニーズが増えているのも最近の特徴だ。たとえば「お父さんの墓」として、故人が好きだったものにちなんで、ゴルフクラブとボール、将棋盤、徳利などをかたどった墓石をつくるのである。