▼長寿化、年金減額に備える「老後資金」のつくり方
デフレより怖い「インフレリスク」
老後資金の不安を解消する最大の方法は、働く期間をできるだけ長くすること。収入を得られる期間が長ければ、貯蓄を取り崩す期間を短くできるので、その分必要な老後資金も少なくてすむ。
さらに公的年金の繰り下げ受給を利用すれば、老後の資金繰りはぐっと楽になるはずだ。たとえば70歳まで働くと決めて年金を70歳からの受給にすると、毎回の受取額が本来の年金額よりも最大42%多くなる。これが一生涯続くから長生きするほど差は大きくなる。
老後資金を考える際には、インフレにも備える必要があるが、公的年金はインフレに強いのもメリットだ。現役時代であればインフレになったとしても、給与もある程度は上がっていくので影響を緩和できる。しかし、リタイア後は貯蓄が頼り。インフレに強い資産で運用していれば別だが、預貯金で持っていると価値は目減りしてしまう。その点、公的年金は、物価に連動する仕組みがある。インフレになれば受給額は増えるので安心だ。繰り下げ受給などを利用して、公的年金の額をできるだけ増やしておくのがいいだろう。
これは夫だけでなく妻にも当てはまる。夫婦で70歳まで働けば、効果は倍増だ。専業主婦がパートで働く場合、所得税の103万円の壁や社会保険料の130万円の壁を気にすることがあるが、ナンセンス。200万円以上稼ぐつもりになれば、壁など関係ない。
さらに厚生年金に加入できる働き方をすれば、将来の年金額を増やすことにつながる。厚生年金保険料は、会社と本人が折半する仕組みになっている。
将来受け取る年金の保険料を会社が半分負担してくれるのだから、利用しない手はない。女性のほうが長生きであるため、公的年金の額を増やすメリットは女性のほうが大きい。パート先を探すなら、厚生年金の加入対象となる会社を探すべきだろう。
(文=向山 勇)