「赤色は使わない」暗黙の了解があった

女性の生活必需品であるはずの生理用ナプキンだが、その歴史は意外にも浅い。『生理用品の社会史』(田中ひかる著、角川ソフィア文庫)によれば、国内で初めて生理用ナプキンが発売され、普及したのは1960年代。それ以前は布や紙、脱脂綿で処置していたため、経血がもれるなどの問題があり、女性の活動は制限されていた。

その後、1980年代にかけて複数の企業が市場に参入。競争によって技術革新が進み、生理用ナプキンは便利で快適なものに変わった。一方で、生理について「汚いもの」「隠してしかるべきもの」という価値観は根強く残ることになった。

その影響もあるだろう。生理用ナプキンのパッケージに関しては「経血そのものを連想させかねない赤色は、使うべきではないという暗黙の了解があった」(本氏)という。

若年層「生理用品っぽくないデザインが欲しい」

今回、その赤色をなぜ「解禁」したのか。背景には、若年層の意識の変化がある。

大王製紙の生理用ナプキンはこれまで、20~30代をコアターゲットにしてきた。だが、「コンパクトガード」の開発に際しては10代後半~20代前半に照準を絞り込んだ。

少子高齢化の進展で、生理用品市場は長期的に縮小トレンドにある。また、各社の商品の機能がほぼ拮抗きっこうしている状態にある今、消費者は一度使った商品に満足し、同じものを購入し続ける傾向も強い。市場で生き残っていくためには、大学進学や就職で親の庇護下から独立し、自分で生理用品を選ぶようになる「移行」のタイミングで、自社製品を認知してもらう必要があると考えたのだ。

開発を担当した大王製紙の本彩氏(撮影=プレジデントオンライン編集部)

若年層へのヒアリングを重ねて見えてきたのは、意外な反応だった。

「『生理は隠すべきもの』という意識が薄くなっていると感じました。ナプキンはポーチに入れて持ち運ぶのが通例で、今もそれが主流であることには変わりありません。ただ、ターゲット層では約5人に1人が『ポーチを使用しない』と答えました。ここ数年はファッションの世界で小型バッグが流行している影響もあって、個包装のままバッグに入れておく人も増えていると考えられます」(本氏)

「隠すべきもの」という意識が和らぐと、生理用品にもファッション性を求める傾向が強まる。パッケージに関してアンケートを採ると、「もっと生理用品っぽくないデザインが欲しい」という声が60%近くに上った。

「これまで私たちが避けてきた赤色も、サンプルを見せたら『かわいい!』と好感触でしたね。社内からは売り上げが落ちることを心配する声もありましたが、ターゲット層の声を信じて市場へ送り出しました」(本氏)

発売後、「コンパクトガード」を含む商品群の売り上げは前年比で8.8%増えた。デザインと機能性を両立した商品として市場に受け入れられたのだ。