子育て支援が手厚い「男女平等国家」フィンランドで少子化が進んでいる。2018年の合計特殊出生率は日本を下回った。文筆家の御田寺圭氏は「リベラルな社会は、その『ただしさ』ゆえに社会を維持できない。その一方で、リベラルではない人たちがリベラルな社会の中で勢いを増している」と指摘する――。
写真=TT News Agency/時事通信フォト
2020年1月8日、スウェーデンを訪れた、フィンランドのサンナ・マリン首相

「多様で寛容な社会」がもたらした矛盾

フィンランドの国営放送によりますと、ことしは権力を持つ大人たちが、周りの人や動物、自然に優しく接していなかったのを、サンタを手伝っている小人やトナカイたちに目撃されていたようです。
そしてサンタクロースは、世界のいろいろな場所で差別や暴力が起きたことに心を痛め、プレゼントを届ける先が減ってしまったということです。
フィンランドの古い言い伝えでは、いじめっ子には平和や言論の自由、人権への尊敬の念を取り戻させるため、プレゼントの代わりにお仕置きをするためのかばの木の枝が送られるそうです。

(NHKニュース『サンタ 北欧の故郷の村を出発 ことしのプレゼントは少なめ?』(2019年12月24日)より引用)

「メリー・クリスマス」ではなくて「ハッピー・ホリデー」と言いそうなほど「政治的にただしい」サンタクロース。多様性・寛容性をモットーにしてきた2010年代の西欧世界の「リベラリズム」のひとつの終着点を見るかのようだ。

多様性・寛容性の名のもとに、「だれもがただしく、だれもまちがっていない」社会を目指した。これによって一時の賞賛や共感は得られたが、しかし西欧的な価値観や道徳観とはけっして相容れない人びとと軒を連ねるような現実を受け入れなければならなくなった。