がん患者が手術をきっかけに体の免疫機能が低下して、一気に体力が落ちて悪化してしまう例もあります。そこで、現在は低侵襲治療という、なるべく体に負担をかけない方法へ進んでいます。カテーテル治療(血管内治療)が心臓、脳血管の分野にまで発展しています。開胸(開頭)することなく、治療が可能となる病気が増えました。

放射線治療もガンマナイフ、サイバーナイフ、トモセラピー、ホウ素中性子捕捉療法、陽子線治療、重粒子線治療など、患部にピンポイントで照射する技術が高まり、まさにナイフ(手術)に匹敵するような進歩を遂げています。

「オプジーボ」のような画期的ながん治療も話題

「がんゲノム医療」という、がんの遺伝子変異を明らかにし、一人ひとりの体質や病状に合わせた治療も実施され始めています。また、ノーベル賞を受賞した研究成果をもとに開発された免疫チェックポイント阻害薬、「オプジーボ」のような画期的ながん治療も話題となりました。

しかし、最先端医療も魔法ではなく、副作用・合併症・欠点もあります。

治療法の選択は、年齢、容体など個人差があり大変難しいのですが、その判断に国立がん研究センター中央病院の片井均医師(胃外科)は、取材時に次のような優先基準を示してくれました。1.患者の病気が治ることがすべてにおいて優先される。2.手術が必要と判断されたら、なるべく臓器は温存されるべき。3.臓器の温存ができるなら、なるべく傷は小さいほうがいい(低侵襲)。

これは、ごく当たり前のように思えますが、患者はできるだけ手術したくない、切りたくないという気持ちの前にこうした前提を見失うことがあります。できるだけ、臓器を温存して切らない医師がいたとしても、あっという間にがんが再発して「最初から適切に大きく切ればよかった」というケースもあります。傷が小さい、痛みが少ないといって、小さく切ったのに、がんは取り残されて、最終的には全摘になってしまうケース、放射線を無計画に当てて、かえって腫瘍が取れなくなったケースもあります。医師と患者は、治療法のメリット、デメリットについて納得がいくまで話し合う必要があります。