6人に共通するのは各分野の先駆者であること
ここに挙げた各部位のがんの名医6人は名医ランキングに掲載されている中でも特に評価の高い医師です。前述した評価方法により、各部位のがん治療において国内トップクラスであると考えます。6人に共通するのは各分野の先駆者であること、卓越した技術、すぐれたチーム医療を牽引していることなどです。
伊達洋至医師(京都大学医学部附属病院)は肺移植・肺がんが専門です。日本で初めての生体肺移植を執刀した、移植医療のパイオニアです。日本の肺移植の実に約4割を執刀し、約3500例の肺がんなどの呼吸器外科手術を経験しています。伊達医師によると肺移植を多く手がけている施設は肺がん治療にも高度な技術を持つといいます。医師間評価ではそのチーム医療を高く評価する声がありました。
宇山一朗医師(藤田医科大学病院)は胃がん・食道がんが専門です。手術支援ロボット、「ダビンチ」を使った手術の先駆者です。消化管、肝胆膵のロボット支援手術を積極的に行い、症例数は全国一とのことです。胃がんに対するロボット手術は2018年から保険適用となりました。ほかの医師から「自分が胃の手術を受けるなら宇山医師に頼みます」という推薦コメントがありました。王貞治氏の胃がん摘出手術を成功させたことでも有名です。
福長洋介医師(がん研有明病院)は大腸がんが専門です。低侵襲な腹腔鏡手術と、他院で無理といわれた高度進行がんまでの拡大手術の両面で治療を行っています。周辺臓器に広がったがんでも、術前化学療法や放射線治療を行った後で手術することで温存、または根治性を保ちながら合併切除を行います。福長医師個人で、年間220件もの手術を行っています。患者さんから「福長医師の直腸がん手術を受け、現在は元気に仕事に復帰しています」という声が編集部に届いています。
高山忠利医師(日本大学医学部附属板橋病院)は肝臓がんが専門です。小児の生体肝移植に日本で初めて成功した世界的名医、幕内雅敏医師のお弟子さんでもあります。高山医師自身も、肝臓の最も深い部分である、肝尾状葉単独全切除手術を世界で初めて成功させました。肝臓は血流が多い臓器ですが、出血量の少ない手術で定評があります。
糸井隆夫医師(東京医科大学病院)は膵臓がん・胆道がんが専門です。膵臓がんの相対生存率は、非常に低く、難治性のがんといわれています。
糸井医師は外科医ではありませんが、近年、内科の内視鏡治療・検査の進歩は著しいものがあります。糸井医師自身も新しい技術を開発し、世界中から研究者が見学にやってくる国際的に活躍する医師です。
中村清吾医師(昭和大学病院)は乳がんが専門です。乳がんの名医として必ずといっていいほど最初に名前が挙がる医師です。ほかの医師から「日本のトップ」「手術だけではなく、薬物療法にも精通している」「自分の患者だけではなく日本全体の乳がん治療を考えている」という推薦がありました。
医師を探すときには、第一段階として、名医ランキングなどを参考にし、次にその医師や病院にご自分の症状や希望を伝えてください。最終的に納得のいく医師や治療をご自身で選んでくださるようお願いします。本来は、医療界で医師のレベルを公表すべきだと考えます。それが社会的な財産となるからです。名医ランキングの調査は大変な労力がかかるので毎年出版することができません。次回版は内科医をさらに充実させ大幅に掲載人数を増やし、20年夏頃に出版予定です。