海外へ漕ぎ出すなら、まず日本を理解せよ
どんな業界であれグローバリゼーションなしでやっていくことはできないが、客観的に日本と日本人を分析した本、そして価値観の多様性を知る手がかりになる本が助けになる。『日本文明と近代西洋』は世界の中で日本がどう生きてきたか、これから生きていくべきかが記されている。
大工の名棟梁が語り下ろした『木のいのち木のこころ』も、人づくり、組織づくりに役立つ1冊である。ねじれた木は、ねじれを生かして真っ直ぐな木と合体させれば予想を超える素晴らしい力を発揮するというが、人の個性も同じこと。著者が長年ふれてきた木を通し、マネジメントの神髄を教えてくれる。
国際的なビジネスに漕ぎ出すなら、我々日本人が日本の素晴らしさを十分理解することも不可欠だろう。『デザインのデザイン』は、デザインを通し、世界に誇れる日本文化というものを再認識させてくれた。
緒方貞子氏の『私の仕事』を読んだときは本当に頭が下がる思いだった。自分は著者のように、「これが私の仕事」といえるものを本当に持っているのか、そして若い人たちに仕事の素晴らしさを正しく伝えられているのだろうかと、考えてしまった。
最後に『風の良寛』を紹介する。ビジネスはお金なしでは語れないため、即物的な部分がついてきてしまいがちだ。だからこそこういう本を時折読み返し、心を洗える自分でありたいと思う。江戸時代に生きた僧侶である著者は、人としての原理原則に羨ましいほど忠実に生きている。
ここにあげた本には共通点がある。それは著者またはそこに描かれた人物が皆、人生において自分でコントロールできないものを嘆かず、コントロールできるものに対し全力投球で生きているということだ。自らで動かせることに真っ直ぐ取り組んだなら、人生も仕事もきっと思うように変えられる――。そんなことを再認識させてくれるだろう。