「ひきこもり」の我が子を何とかしたい。そんな不安や焦りが新たな問題を招いている。ジャーナリストの池上正樹氏は「藁にもすがりたい親や家族を狙う『引き出し屋』が跋扈ばっこしている。テレビなどで取り上げられているが、数百万円の費用を請求するなど実態が悪質なものもある 」という――。

※本稿は、池上正樹『ルポ「8050問題」高齢親子“ひきこもり死”の現場から』(河出新書)の一部を再構成したものです。

写真=iStock.com/Six_Characters
※写真はイメージです

「暴力的支援」業者に子どもを託す親

公的な支援を頼ることができないとわかり、早くどうにかしなければと焦った「ひきこもり」当事者家族が、いわゆる「暴力的支援」とされる業者に依頼をしてしまうケースが続出している。「暴力的支援」とは、「ひきこもり支援」をうたう業者が、本人の意思を無視して、本人が望んでいない「支援」を押しつける行為全般のことだ。

対象者を無理やり自宅から連れ出すことから、「引き出し屋」とも言われるが、相手に暴力を振るっていなくても、ウソをついたり、騙したり、断れないように追い込んだりして、宿泊型の施設などに連れていく手法そのものが「暴力的」と言える。

こうした悪質な業者の特徴は、「ひきこもり」や精神疾患があってもなくても関係なく、家族からの依頼があれば、対象者を支配関係に置き、心に恐怖を植えつけて、思い通りにコントロールしようとする。自由や自己決定権を奪い、事実上の監禁状態に置かれることも少なくない。実際、そうやって連れて行かれた業者の施設などから脱走者が多発していて、人権侵害が行われているとの指摘もある。

業者の元から脱走や脱出した後も、夜中に悪夢でうなされて目が覚めるなど、PTSD(心的外傷後ストレス障害)の症状に苦しむ人が多い。そのため、自分を売った親を一生恨み続け、家族関係は崩壊。ひきこもり状態をより強化させてしまった例もある。