支援事業の設計がひきこもりの長期化を招いた

働きづらさの要因を何も解決できていないのに、「期限内に職場に押し戻そう」という目的のサポステ事業の設計そのものが、馴染まなかったのである。中には、藁にもすがる思いで家を飛び出して、施設にたどり着き、やっぱり他人と話すのがこわくて家に帰って……というのを何度も繰り返して、ようやく相談窓口にたどり着く人もいる。

そんな思いをしてやっとつながることができた担当者から、「あなたは支援の対象ではない」と冷たく突き放され、たらい回しにされたあげく、なんの支援にもつながることができなかったとしたら……。そんな目にあって深く傷つき、社会に戻ることをあきらめ、再びひきこもっていく人も少なくない。こうした状況が、ひきこもりの長期高齢化を招いてきた一因だ。

社会に無理やり適合させる訓練は意味がない

これまで述べてきたように、国のひきこもり支援のゴールはあくまでも「就労」であって、社会に無理やり適合させるための訓練が主体のものだ。そんな支援はそもそも「ひきこもり」という心の特性には馴染まない。

池上正樹『ルポ「8050問題」高齢親子“ひきこもり死”の現場から』(河出新書)

一言で「ひきこもり」といっても、一律の状態ではなく、その背景も状況も一人ひとり違う。ただ、ひきこもる心性で共通している傾向として、真面目で心優しい人が多く、カンがいい。相手の気持ちがわかり過ぎてしまい、気遣いし過ぎて疲れてしまう。誰かに何かを頼まれると断ることができずに、後悔してしまうことなどが挙げられる。

高齢の親世代が生きてきた時代とは違い、今は頑張っても結果が出せるわけではなく、皆が余裕のない中でハラスメントも横行する。ひきこもる行為とは、そんな社会でずっと頑張ってきたものの、命や尊厳の危機を感じて、自分の価値観を守るための回避であって、自死ではなく生き続ける道としての選択肢であることを理解する必要がある。

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