なんといっても、大切なのは「体力があること」だという。大谷さんは高校時代、バドミントン部で国体にも出場している。体力があって、風邪を引くことも少なかったから、長く勤めることができた。

次は家族の助けがあったこと。ご主人は彼女が働くことに寛容だった。大谷さんの仕事が遅くなったときは、子どもの食事の面倒を見ることも再三だったという。家族の理解と助けがなければ長く働くことはできない。

三番目と四番目の理由は王将ならではのものだ。

「王将は社員だから、パートだからという差別がない会社です。給料こそ私たちパートは時給計算ですけれど、それ以外に差別を感じたことはありません。それに大東社長は誰に対しても平等です。営業本部長だった頃から、よくお店を回ってましたけれど、リンゴを持ってきて、おいしいからみんなで食べてください、と気さくに声をかけてくれました。社長になった今でも、私たちパートに気を遣って話しかけてきます。

もうひとつは休みを取るとき、融通がきくこと。パートの人を見ていると、突然休む理由は、子どもが熱を出したとか、風邪を引いたといったもので、本人が休みたくて休むわけじゃないんです。王将では、パートさんが子どもが熱を出したと言ってきたら、残りの人数でできるだけカバーして、そして、休んだ人を責めることもしない。パートはみんな小さな子どもがいるから、そういうふうにしてもらえるのはとてもありがたいんです。

私、以前に一度だけ、他のラーメンチェーンの面接も受けに行ったことがあります。そこは、『突発的に休むときは他の従業員と連絡を取って、代わりに出てもらうよう、そちらでやってください』と言われたんです。それで働くのはやめました。だって、よく知らない人に突然、連絡して、代わりに出てくれなんて、なかなか言えないでしょう。王将は小さな子どもを持つ親の気持ちをわかってくれるから、長く働くことができたんだと思います」